本に書いてあるわけじゃないからね。だから、実地で苦労しながらやった。そういう意味では、完璧なルールなんてはじめからつくりようがない。とりあえずつくって、合わなければ、その都度変えていけばいいんだっていう発想で物事を進めていたね。
だから、「走りながら考える」という考え方がJリーグには根付いている。DNAのようなものかな。
――前例のない分野で「走りながら考える」というのは、今の日本のビジネスシーンに不可欠な発想ですね。プロリーグ設立に「時期尚早」という批判もあったとのことですが、Jリーグ設立当初の風当たりは強かったですか?
93年からJリーグをスタートさせるとは言ったものの、その当時はプロ野球の人気も低迷していた。スポーツ界全体がもう沈滞ムードだよね。
そういった中で、世界的にもレベルが高いわけではない、それにスタジアムも立派なものがない日本のサッカーがよくプロ化するな――そんな批判が新聞やテレビに結構出ると思ったら、意外とそうではなかった。
そもそもプロ野球とは異なり、「豊かなスポーツ文化を創造する」という新しいコンセプトを掲げた前例のないリーグだからね。
初めに「いけるかもしれない」と思ったのは、Jリーグ(日本プロサッカーリーグ)が1991年11月1日に法人化したとき。スポーツ界が沈滞ムードになっているときに新しいスポーツのプロリーグができるということで、マスコミがたくさん記事を書いてくれたんだよね。
僕に言わせりゃ、1日に2億、とか3億とか、もっと5億、10億ぐらいの広報宣伝費に匹敵するくらい、新聞・テレビがJリーグについていろいろ報道してくれた。僕はJリーグ初期の人気は、6割がマスコミの力だと本当に思っているんだ。
92年のユニフォームとグッズの発表にも多くのマスコミが来てくれて、結局翌日のスポーツ新聞には、一面トップで、しかもカラーで報じてくれた。批判記事など一つもなくて、これは成功するなと思ったな。