しかし、筆者がこのように考えるのは、お笑いがどうこうという話に限らず、「ダウンタウンチャンネル(仮)」のようなニューメディアができることで、オールドメディアの「最大の弱点」がこれまで以上にくっきりと浮かび上がってしまうからなのだ。それは一言で言ってしまうと、これに尽きる。

「クレームに対して“嫌なら観ないでください”と言うことができない」

 どういう理屈をこねようとも、テレビや新聞というオールドメディアが「広告ビジネス」であることは否定できない事実だ。

 広告というのは消費者の目に入らないと意味がない。テレビや新聞はマス(大衆)に届く、不特定多数の消費者の目に触れるので「広告媒体」としての価値がある。実はオールドメディアが部数や視聴率にこだわるのは、これが読者や視聴者などの「顧客満足度」につながるからではない。広告費用の売値をつり上げられるから、つまり、BtoBビジネスのためだ。

 さて、そんなテレビや新聞の内容に読者や視聴者からクレームが入ったとしよう。カスタマーセンターに「なんだあの番組は!家族で安心して観られないだろ」とか「一方の話だけ取材してめちゃくちゃ偏向しているだろ」なんて怒りの電話がかかったきた――。そこで担当者はどうするかというと、平謝りして「今後の参考にさせていただきます」などクレーマーのご機嫌を取るしかない。

「そんなにうちの番組(新聞)に不満があるのなら、もう二度と見なくていいですよ」なんてことは口が裂けても言えないのだ。

 もしそんな「こっちも客を選ぶんですよ」的な態度をとってしまうと、クレームを入れてきた側がネットやSNSで大騒ぎして、マスゴミが調子に乗っているとか、放送法や軽減税率で国から優遇されているくせに偉そうだなどと叩かれる。そうして社会の反感が高まると、今のフジテレビのように広告スポンサーが抜けてしまう。読者や視聴者も減るので、部数や視聴率も落ちる。「広告媒体」としての価値も下がるので、売り上げが落ちる

 そこでこういう「業績低迷」を避けるため、テレビや新聞はどうするのかというと、「クレームの少ないコンテンツ」を量産する。

 尖った企画や賛否両論のある話題をボツにして、世間がみんな叩くような人を叩く。ニュースは政治家・官僚や専門家が語ったことを右から左に流し、スキャンダルは文春や新潮の記事をコピペする。これなら数字はバッチリ取れるし、クレームがあっても、役所や週刊誌の責任にすればいいので、「広告媒体」としての価値は下がらない。

 実はこれがテレビや新聞というオールドメディアがオワコンになっている根本的な原因なのだ。