BMWが掲げる「駆け抜ける歓び」実現
最高のドライバーズSUV
静かなのはエンジンだけではない。ロードノイズも同様だ。サスペンション・セッティングも見事というほかない。X3はタイヤの当たりがソフトで、ゴツゴツとした印象が薄い快適な乗り心地を実現しながら、ロールやピッチといったボディの無駄な動きを徹底的に排除している。
私が20dで最も強く感銘を受けたのは、ドライバーが行った操作に対する反応がすべて素直なうえに、リニアリティが高い点だった。ステアリングを切ったとき、もしくはスロットルペダルやブレーキペダルを踏み込んだとき、それらの操作量と、操作量に対するクルマの反応がつねに1対1の関係にある。
その結果、ドライバーはクルマの動きを正確に予想しながら、思いのままに操ることができるのだ。これは簡単なようでいて、なかなか実現できないパフォーマンスである。
たとえば、スロットルペダルを踏み込んだ瞬間にエンジンがかすかにでも息つきをすれば、ドライバーの期待は裏切られてしまう。サスペンションの動き始めでダンパーが適切な減衰力を発生できなければ、クルマの動きはギクシャクしたものになる。こうした細かな部分まで入念な熟成を施してこそ、初めてドライバーが意のままに操れるクルマが完成するのだ。しかも、そうしたクルマは挙動が緻密にコントロールされているため、乗り心地が上質になるという副産物も手に入る。これこそプレミアムカーの真髄というものだろう。
新型X3は、BMWが掲げる「駆け抜ける歓び」を実現するために欠くことのできないプロセスを丁寧に実践した。最高のドライバーズSUVに仕上がっている。
(CAR and DRIVER編集部 報告/大谷達也 写真/原田 淳)