現代人の多くは
交感神経が高まったまま眠りにつく

大貫 私たちの身体も同じで、パンパンに空気が詰まった状態だとうまく回らないのですが、空気の量が適正だと途端に動きやすくなります。さらに、空気が抜けることで、自律神経のうち副交感神経にスイッチが入って、全身がリラックスができるんです。

藤田 なるほど。動きにくいのは、呼吸が関係しているのですね。呼吸の仕方によって、私たちの身体は自由を失っているともいえますね。

大貫 そうです。空気が充満していると、関節の捻りが効かず、身体ごと回ってしまうんです。だから関節そのものにも負担がかかるし、当然、歪みも生じてきます。結果的に痛みや不快感を引き起こすことになるのです。

藤田 呼吸というとしっかり吸うことが重要なように感じますが、そもそもその前提が間違っていたとは……。でも人類は、何万年もそうやって生きてきたのではないでしょうか?

大貫 おっしゃる通り、空気がパンパンの状態、つまり交感神経を活性化して人類は危険を退け、進化してきたともいえます。しかし現在は平和すぎて、その必要がなくなっているのも事実。交感神経が役立つシーンは、戦いの時です。だから戦争中であったり、スポーツをしている時にはしっかり吸って、身体を空気で満たすのは問題ありません。交感神経は集中力を高めるので、ビジネスシーンでも大事な商談などの前に、身体は勝手に空気を満タンにしようとします。

藤田 緊張している状態、というわけですね。

大貫 でも問題は、この交感神経優位の状態はずっとは持続できないことなんです。自律神経は交感神経と副交感神経がオンとオフを繰り返すことでバランスをとっています。ずっと交感神経のアクセルを踏み続けることはできないようになっています。どこかで副交感神経に切り替える瞬間がなければ、身体が休むことができません。ところが現代人の多くが、交感神経が高まったままベッドに入ってしまっているんです。

藤田 私もきっともそうなっていると思います。よく「深呼吸が大事」だと聞きますが、それは正しいのでしょうか?

嫌なことを言われてもイラッとしない人が意識的にやっている「当たり前の習慣」とは?大貫氏(左)と藤田氏(右) 写真提供:インテグレート