自律神経が乱れない
整った1日の過ごし方とは?
大貫 深呼吸も、吸うばかりでしっかり吐けていなければ意味がありません。どちらかといえば、深いのは「吸う」だけになっていて、深く「吐く」ことを忘れてしまっている人が多いですね。
藤田 確かにそうですね。深呼吸=深く吸うイメージがありますし、それが良いのだと盲目的に信じられている気もします。つまりわれわれの呼吸に対する常識が誤っていたのですね。では、1日の過ごし方を考えたときに、自律神経にとって理想の状態とはどのような流れになるのでしょうか?
大貫 1日の中にも自律神経の波があります。朝起きたら、一旦交感神経優位で身体は空気で満タンに。そのまま出社して昼まで精力的に仕事をこなします。そしてランチ後に身体から空気を抜いて、副交感神経にスイッチ。ここで短時間でも昼寝を取れるとよいかもしれません。その後、夕方に向けてまた交感神経優位にしていく。こういった流れだと高パフォーマンスが持続しやすいですね。
藤田 この自律神経の波に乗れればいいんですが、現実にはそうはできない人も多いかもしれません。ずっと交感神経優位の状態で過ごし、帰宅。その後もずっとスマホを見ていたり、飲みに行ってしまったり。寝るのが遅くなれば、また自律神経のリズムは狂ってしまいます。
大貫 息を吐くことで得られるメリットは、心身ともに絶大です。適切な呼吸の方法を学ぶと、身体の痛みや違和感の軽減につながりますし、コンディションが良くなるからイライラもしなくなる。何か言われたり、トラブルに直面しても動じなくなっていきます。実際にセミナーなどで、施術やエクササイズなどで呼吸を適切な状態に戻した後は「痛みが軽減された」「しっかり眠れた」などの感想も多いですし、我々が毎回測定している呼吸数も呼吸の動きも改善されているので、即効性があるのだと思います。
藤田 “息抜き”という言葉もありますしね。昔の人は息を吐くメリットを知っていたのかもしれないですね。
大貫 田んぼのあぜ道で丸くなっておにぎりを食べる。昔の農家の人に見られるような姿が正解なのでしょう。適切な呼吸は横隔膜で行うんですが、横隔膜がきちんと機能していれば、肋骨が下がった(平らになった)状態になります。超一流の選手は、ふだんから肋骨が下がっています。大谷翔平選手然り、ダルビッシュ有選手も。緊張とリラックスのバランスの取り方がとても上手なんですよね。
藤田 緊張とリラックスの緩急が、高いパフォーマンスを実現するんですね。息を吐く動作そのものが心地良いものだという認識も薄いのかもしれません。トップアスリートのように成績を残している選手の肋骨が下がっているのなら、“吐く呼吸”とメンタリティの関係も想像できます。
大貫 おっしゃる通りで、息を吐くことで副交感神経が活性化されるので、深いリラックス感を得ることができます。人は緊張ばかりではうまく立ち回れません。例えば、4月以降、環境が変化した人たちは今が要注意の時期かもしれません。緊張のせいで、常に交感神経にスイッチが入った状態で5月を迎えていくことになります。そこで起こるのが5月病です。