自分とは違う考え方を持っている他人が目の前にいる時、それぞれの「正義」が対立しあいます。その時に、「相手の正義の存在意義は何だろうか?」と考えることが大事なのです。そして、

「自分的にOKな方法で、相手の正義の存在意義を尊重するにはどうすればいいか?」

……と考える。これが「メタ正義感覚」のコツです。

 え?意味がわからない?「相手の存在意義」って何?テツガクの話?

 戸惑うのも無理はありませんので、まずは具体的な例を挙げて一緒に考えてみましょう。

家族旅行の行き先を
「メタ正義的」に考えた場合

 例えばあなたはパートナー(旦那さんあるいは奥さん)と、お盆休みの家族旅行の行き先を相談しているとします。

 そこで、相手が「沖縄に行きたい」と言い出したとしましょう。

 でも、あなたはその案が気に入らないとします。

 あなたが気に入らない理由は、例えば飛行機が嫌いだとか、移動時間が長いとか、この時期は混んでいるとか、シーズン料金が高くてコスパが悪いとか、まあ色々あるでしょう。

 でも、ただ沖縄行きを否定し、自分が行きたい別のアイデアを押しつけるだけでは、「人が2人いる意味」が全くありませんよね。

 一瞬はそれで押し切ってしまえたとしても、20年ぐらい経ってから夫婦喧嘩をした時に、「あの時の旅行だってこっちの意見聞いてくれなかったじゃん!いつだって自分のことばっかりしか興味ないんでしょう!」

……などと突然蒸し返されて離婚の遠因になってしまったりしかねません。(ジェンダー論的配慮からできるだけ“女言葉”的に見えないようにセリフを書きましたが、こういう発言は男女どちらにも実によくありますよね)

 そういう時に、相手の「言っていること」ではなく、相手の意見の「存在意義」とどんどん向き合っていくことが大事なのです。

 そのパートナーは、なぜ沖縄に行きたいのでしょうか?綺麗な海で泳ぎたいのでしょうか?「ザ・観光地」みたいな気分を味わいたいのでしょうか?「パーッとインスタ映えする散財をしたい」という望みがあるのでしょうか?「日常を忘れられる非日常的な空間で何も考えない数日間を過ごしたい」みたいな欲求でしょうか?

「メタ正義感覚」は、相手の言っていることの背後にあるその意見の「存在意義」に対して敬意を払って理解することから始まります。