「地元の店の魅力」を
磨き上げる新規事業の実力

 マルヒロの本拠地でも、2016年に長崎博覧会が開催された。マルヒロはこの機会をうまく活用して、波佐見町だけでなく有田町や武雄市、嬉野市という近隣の焼き物の産地を周遊バスでつなぐ「ぐるぐるひぜん」というイベントに拡大させた。まさに一番星が起点となって積極的に動いて、産地全体によい影響を及ぼしている。

 これに先立って2013年から、全国の観光地で地域の小規模工芸メーカーと、お土産もの屋さんを結ぶ「日本市プロジェクト」を始めた。中川政七商店と一緒に地元の土産ものづくりに取り組むパートナーショップを「仲間見世」と呼び、その土地ならではの土産用の工芸品の開発、展開を行っている。

 たとえば、函館の魅力を発信する拠点として、函館空港の中にコンセプトショップ「函と館」をオープン。そのネーミングにも、地元ならではのこだわりが盛り込まれている。そもそも函館という地名は、函館山のハコ(急な崖)とタテ(高い丘)という意味からついたという説がある。地名そのものが「対」を表現しているのだ。

 幕末期、日本を代表する貿易港に位置付けられた函館には、1階が和風、2階が洋風という函館独特の和洋折衷住宅が数多い。また、函館の象徴ともいえる夜景と修道院にも、「対」のコンセプトが織り込まれている。夜景には「表夜景」と「裏夜景」があり、修道院には「トラピスト(男子修道院)」と「トラピスチヌ(女子修道院)」がある。そこから、函館の魅力を「対」で編集する発想が生まれたという。

 店内では、地元メーカーとともに地域の文化や、物産を身近に感じられるように共同開発したオリジナルアイテムを販売。また、函館の観光名所や名産を「対」にして紹介する旅行本を通じて、町の魅力を多面的に伝える活動を支援。函館空港でしか購入することのできない特別なお土産に出会える場所として、人気ショップとなっている。

 ほかにも、次のような仲間見世プロジェクト事例が光っている。

・「えすこ」出雲大社前店:出雲型勾玉を伝承する株式会社めのやの新業態をサポート。スターバックスコーヒー出雲大社店と一体になった建物は、和風の外観が景観に溶け込んでいる。1階では、因幡の白兎にちなんだ「縁結びうさぎ」や、お守りや勾玉を納める「お守り袋」など、出雲ならではの土産ものを販売している。2階では、さまざまな種類の天然石から好きなものを選んで、アクセサリーづくりが体験できる。まさに、島根の「えすこ(いい感じ)」なものとことを体感できる場となっている。

・太宰府天満宮案内所:太宰府天満宮の案内所の併設売店のリニューアルをサポート。太宰府天満宮にまつわるさまざまなモチーフを描いた「太宰府ふきん」や、神社の名物の梅を、その年の干支で表現する風呂敷や手提げ袋は、毎年の参拝客の定番土産となっている。このリニューアルの結果、観光案内所の来客数は約3倍に、売上は6倍ほどに増えた。