トランプ関税にも「ぶれず、ジタバタせず」、中長期・短期対応で世界販売1000万台、母国での300万台生産体制堅持を明確にし、日本トップ企業としての矜持を示してくれたことは、今回の決算発表における最大のメッセージとなっただろう。
トヨタにとって「国内300万台生産体制死守」の意義は大きい。
5年前の20年5月に当時の豊田章男社長が、「国内生産体制はグローバルトヨタの基盤であり、どんなに経営環境が厳しくなっても日本にはモノづくりが必要であり、グローバル生産をけん引するために競争力を磨く現場が必要だという信念の下、石にかじりついても守り抜いてきた。トヨタだけを守ればいいのではなく、そこに連なる膨大なサプライチェーンと、そこで働く人たちの雇用を守り、日本の自動車産業の要素技術と、それを支える技能を持つ人財を守り抜くことでもある」と、その意義を語っている。
かつては、他社も国内の生産体制を重視しており、2010年代には日産とホンダが「国内100万台生産」を守ることを強調していた。日産はカルロス・ゴーン体制下で海外を重視する中でも国内100万台維持を、ホンダは伊東孝紳元社長時代に円高でも国内生産100万台を堅持するという発言をそれぞれ行っていた。
だが、その後ホンダ・日産ともに国内100万台生産のボーダーラインからあっという間に脱落してしまった。ホンダは、八郷隆弘前社長体制時に、生産体制の再編として狭山工場の閉鎖を決定している。日産も国内工場の稼働率が低下しており、構造計画の見直しの中で工場閉鎖もうわさされている。
その中にあって、これだけ米国からの「現地生産化」の圧力にさらされながら、改めてトヨタの佐藤社長から国内生産体制の維持という強い発言が示されたことは特筆すべきだろう。佐藤社長は「国内の部品サプライチェーンを守りながら輸出することは、モノづくり産業に取り組む上で重要なポイントで、ぶれずに取り組んでいく」と語った。