社会制度からこぼれ落ちた人が
犯罪に走ることを防ぐには
そして、罪を償ったあと、職を見つけて社会生活を送れなければ、また犯罪によってお金を得ようとしてしまうかもしれない。犯罪に関わった人の境遇を想像することは、犯罪を許容することでも、加害者の肩を持つことでもない。

むしろ犯罪を少しでも減らすため、被害者を生まないために必要なことだと思う。実際に犯罪者に関わる職業の人や支援者であれば、一般の人とはまた違った見方をするだろう。そうではない人が、普通に生きていれば、すれ違うことすらない属性の人のことを想像するのは限界があるかもしれない。
しかし、少しでも想像し、知ることはできるはずだ。実情をどこまで知っているかで、社会の見え方も、意見も変わる。犯罪に関わった人は、本当に不真面目さや意志の弱さだけが原因で、そうなったのだろうか。自分とは違う存在、そう切り捨てる前に、想像もできないような現実があることを、少しでも想像するべきではないか。
また、知的な問題ゆえにセーフティネットにつながれず、制度の網からこぼれた人は、衣食住が守られた刑務所に戻るためにまた盗みといった犯罪を犯すということがあるそうだ。
障害を持たない人を標準として設計された社会に適応できず、こぼれ落ちた人々が犯罪に走ることを防ぐには、背景の理解と支援が必要ではないだろうか。
きっとみんな、犯罪の被害者も加害者も生みたくない、犯罪をなくしたいという思いは同じだと思う。犯罪を許さないという思いと、犯罪を生まないために必要なことを考えることは両立できるはずだ。