敗北の味に慣れてしまった点も見逃せない。例えば「初めて10万円失った」ときのショックと「既に100万円を失っており、さらに10万円を失った」ときのショックはどちらが大きいだろうか。

 これは「感応度逓減性」と呼ばれる心理現象で、扱う金額が大きくなると損得のインパクトが減少する。つまり同じ金額を失っても感覚がマヒしているため、後悔と反省の味が弱く感じられる。

 結局、僕はブラック企業から獲得した賠償金、これを1年間という短い期間ですべて使い果たした。正真正銘の大バカ者だ。見栄を張って他人に奢ったりもしたので、大金を失った原因は1つではないが、投資での大失敗が響いたことは言うまでもない。

 まさか翌月の家賃が支払えなくなり、父親に助けを求めるとは夢にも(悪夢にも)思わなかった。せめて奨学金の一部を繰り上げ返済しておけばよかった。そうすれば26歳の時点で預金0円、奨学金残債460万円という、トホホな状態に陥らなくて済んだのに……。

 最後に一言。今この記事を読んでくれているアナタが「人生を守る」ための参考情報として、僕の存在を反面教師にしてくれたら、この愚かで苦い経験にも意味があったことになる。