お見合いに付き沿う羽多子(江口のりこ)
「着物」の演技にも注目
艶やかな着物を着て、羽多子(江口のりこ)と共に見合いに出かけようとすると、屋村(阿部サダヲ)が「馬子にも衣装」とからかう。羽多子は「あてはのぶのつきそいです」とムッとするが、なぜか髪飾りをつけて、存在感を強調している。
今田美桜のほうが着物をしっかり着ていて、江口のりこは着慣れない印象。芝居の巧さで定評のある江口だが着物の着こなしや所作は身につけていないように見えるのはどうしたことか。
いつもの手ぬぐいを頭にかぶって割烹着を着て働く姿が板についている感じとは打って変わって、おしゃれしているのに、いわゆる着物に着られてしまっているような。おしゃれしているのに無防備に見えてしまっている羽多子ははたしてどういう環境で育ってきた人なのか気になった。
びしっと着物を着て外に出ることなしにずっと家で働いていたのだろう。いや、これも「衣装に中身が伴っていない」という屋村のセリフから導き出した最適解の演技かもしれない。なんてことをあれこれ思いめぐらすのもドラマや俳優を見る楽しみのひとつである。
それはさておき。お見合いである。
次郎も結太郎に会ったことがあり、ソフト帽が似合っていたと言い、羽多子ものぶも同時に「あの帽子や!」と喜びの声を上げた。
こうなるとこれは運命という感じがしないでもない。中園ミホの代表作『やまとなでしこ』の主人公・桜子(松嶋菜々子)の決めセリフ「今夜は、たったひとりの人に巡り合えた気がする」のようなことが起きたのではないか。
ところが、のぶは、ふたりきりでお庭を散策しているとき、結婚する気はないのだと率直に謝罪する。
次郎も実は結婚の必要性を感じていないと言う。
ふたりともその気がないのに見合いに来ていたという点においても気が合いそう。結太郎の話で盛り上がる。遠くから見つめている羽多子と節子は満足そうだ。
のぶは次郎から、慰問袋が役に立っていると聞き、子どもたちに早く伝えたいと心を逸らせる。
「終わらない戦争はありません。のぶさんはこの戦争が終わったら何をしたいですか」と次郎に聞かれれたのぶは「考えたこともありません」と答える。のぶは戦争の状況にすっかり埋没してしまっている。
次郎はもっと先を見据えている。彼のまなざしがのぶに影響をもたらすだろうか。