当時の森保ジャパンは、長友の目に「元気がないというか、ちょっと覇気がなかった」と映っていた。直後に届いた復帰要請を、長友は次のように受け止めていた。

「次のワールドカップまでの長い期間で、いい時期だけじゃなく難しい時期も必ず訪れる。そうなったときに自分自身が呼ばれるための、やはり長友は代表に必要な存在だと思われるための準備はしてきました。経験に関しては誰よりも積んでいるので、そういった部分も評価されたのかな、と」

「ブラボー!」「コラージョ!」
快進撃を縁の下で支える

 カタール大会で長友は髪の毛を金髪から赤色へと変えながら、イタリア語の感嘆詞である「ブラボー!」や勇敢さを意味する「コラージョ!」を連呼。全身から放たれる熱量が、グループステージで強敵のドイツ、スペイン両代表を撃破し、世界を驚かせた快進撃を縁の下で支えていた。

 同時にカタール大会では全4試合に先発。2010年南アフリカ大会を皮切りに、2014年ブラジル大会、2018年ロシア大会と続くワールドカップの出場試合数を、日本歴代最多の「15」に伸ばした長友は、フィールドプレーヤーでは最年長だったチーム内での立ち位置をこう語る。

「チームの一人ひとりのキャラクターを考えたときに、経験値が一番高い僕がどんどん熱量を出していかなければいけない、という使命的なものを感じていました。すべてが僕の本当の姿ではなかったかもしれないけど、それでも確実にチームのプラスになると思っていた。こんなにもうるさくて、変わったキャラクターの持ち主でもあるオッサンを受け入れてくれた後輩たちには本当に感謝しています」

 あるときは素のままで、またあるときには意識して、劣勢が予想されたチームを鼓舞する役割を率先して演じた。チームスポーツでは、ムードメーカーを担える選手も欠かせない戦力だと証明したカタール大会から約1年3カ月。難敵の北朝鮮戦を前に、再び長友が日本代表に必要とされた。

 それでも、試合に出られないどころか、ベンチにも入れない。それでも長友の姿勢は変わらなかった。