「長文での相談」をしようとしたら
立ち止まって再考すべきタイミング

 それから、保護者の文面が長すぎる場合は、保護者の方自身が考えすぎて、精神的に不安定になっているようなところがあるので、そういう時は「もう一回読み直してから送って下さい」とはっきり言います。そうすると、はっと気づいて、考えを整理して送ってきてくれます。

 長文の場合によくあるのが、「子どものやる気がないのはなぜなんでしょう」と聞かれたりすること。保護者の方が問題を整理できていない場合は、一旦、時間を置いて冷静になっていただくことが最優先です。一番良くないのは、不安な感情を子どもにぶつけることなので。

 例えば「○○塾の●●校舎に通わせても大丈夫か」という答えのないことを心配するのではなく、「我が子の精神状態や健康状態が大丈夫かな?」という目の前のことを解決する方が、優先順位はどう考えても高いでしょう。

 基本、変えられないことよりも変えられることに焦点を置くことが重要ですし、人間はそれしかできません。ちなみに、「○○塾の●●校舎に通わせても大丈夫か」という相談に関して、私がイエスと言ってもノーと言っても「でも、先生〜」という不安は尽きないので、建設的な時間の使い方ではありません。もし決定的に大丈夫ではない状況があるのなら、相談している場合ではありませんし。

富永:原因は保護者にあるかもしれないのに、通っている塾に不安があるからと、オンラインの家庭教師を依頼する人も多いようですが、どうお考えですか。

渋田:もちろん優秀な講師の先生はたくさんいて、私の知り合いにもいらっしゃるのですが、ピンキリで、キリ(質の低いもの)が圧倒的に多いかも?という視点が大事だと思います。

 ポイントは、その指導に再現性があるかです。自分が難関中学に合格したからと言って、その方法論が別の生徒にも当てはまる指導かどうかはわかりません。

 また、子どもたちは「実験材料」では絶対にないので、新しい指導をいかにも良さそうに始めた方には要注意です。その場合は、しばらく「入試結果」を注視した方が良いとは思います。

 また、「セカンドオピニオン」として無責任に「耳なじみのよいこと」を言う人の話は、つっこんで話を聞いてみてください。受験はそんなに甘くはありませんので、厳しいことを言ってくれる人の方が貴重です。

富永:保護者は塾をどう選ぶべきでしょうか。

渋田:まず「合格までに最低限何が必要か」を考えることが大切です。4教科以外にもさまざまなオプションを提供するオーバースペックの塾が多いと思います。すべてを詰め込むのではなく、必要なものを見極める目が必要です。

 多くの保護者は指導力や受験情報に加え、保護者のメンタルケア、子どものモチベーション向上を求めている。今は大手塾ではそういったケアがあまりできていないと思います。それは経験値があってこそできることで、保護者の心の機微がわかる先生はそう多くはありません。