駒場東邦の入試後に起きた
面白いこと
渋田:桜蔭や頌栄女子学院、神奈川だと洗足学園や清泉女学院などの女子校は、いいところを引き出す問題を出していますね。栄光学園も駒場東邦も難しすぎず簡単すぎないレベルで、差がきちんとつく良問です。
駒場東邦の国語の先生と対談した時に、「試験後に『続きが読みたいから買って!』と子どもが言い出して、そのまま本屋に寄って国語の問題に出た本(※)を買って帰る子が毎年いるんですよ」というお話を伺いました。文章が面白くて続きを読みたいと思わせる、そういう試験問題を出す学校は素晴らしいと思います。
※ 村上雅郁著短編集『君の話を聞かせてくれよ』(フレーベル館文学の森)から「タルトタタンの作り方」。ちなみに同書は近年中学入試で頻出。当該短編は、ただケーキづくりが好きなだけなのに、「スイーツ男子」というレッテルを貼られて、周囲から見下されることを憤る男子生徒や女の子らしさから解放されたい、とボーイッシュな自分であることを誇りにしている女子生徒が、「女子らしい言動」を自らに禁じることで、別の「らしさ」に縛られ葛藤するさまなどが描かれる。
逆もあります。ある学校で村上春樹の小説文が出たことがあるのですが、村上春樹の小説は、性描写も多いので、もし子どもが興味を持ってほかにも読みたいと言われたときにどうすればよいのか。そういう意味ではちょっと困った問題でした(もちろん入試問題の題材自体は穏当な内容でしたが)。
なお、渋幕、渋渋は毎年独自路線の問題を出しています。渋幕は過去に、アイヌ民話を下敷きにした津島佑子(太宰治の次女)の短編小説などが題材になった年度もあり、学校の色がしっかり出た問題だと思います。
入試問題には、知識問題も出題されますが、書き順のほか、熟語の読み方で湯桶読み(訓読み+音読み)や重箱読み(音読み+訓読み)、または細かすぎる文学史などの細かい知識を出す学校は改善してほしいと思います。
こういった問題で国語好きが増えるわけでもありませんし、一部の学校でその出題があることで、塾のカリキュラムでは教えざるを得ないという弊害が出てきます。