ニューロ・ロジカル・レベルとアイデンティティ

「儀式」がどんな役割を果たしているのか。本書では、ニューロ・ロジカル・レベルを使って解説している。ここでは、簡単に触れていこう。
 ニューロ・ロジカル・レベルとは、NLP(神経言語プログラミング)理論の中でも非常に重要な意識の階層構造モデルだ。
 人間の意識レベルは5段階のピラミッド構造になっており、上から順に、アイデンティティ(自己認識)、信念・価値観、能力、行動、環境となっている。
 この順序にしたがって私自身を表現すると次のようになる。

●私は営業のコンサルタントである。
●私の価値観は「絶対達成」である。
●私はクライアントの行動を変革できる。
●私は年間5000人に講演する。
●私は名古屋に本社があるコンサルティング会社に所属している。

 ニューロ・ロジカル・レベルの研究によれば、上位レベルから下位レベルという流れのほうがインパクトが大きい。「アイデンティティ(自己認識)」や「信念・価値観」といった上位レベルの変化は、必ず下位レベルに強く影響し、何らかの変化を起こすというものなのだ。
 つまり「アイデンティティ(自己認識)」や「信念・価値観」が変わることによって、「能力」が開発されたり、「行動」が変わるということである。

 とはいえ、上位レベルの変化は簡単ではない。
 そこで、下位レベルの「環境」や「行動」に変化をもたらすという考え方がより一般的だ。それほどインパクトは大きくないものの、新たな「行動」を繰り返すことで上位レベルである「能力」や「価値観」を変えることができる。
 自分が所属している組織や家族といった「環境」からは、軽微であっても毎日のように多少のインパクトを受ける。
 組織に愚痴をこぼす同僚がいたり、居住空間が散らかっていたりすれば、あまりよい影響を受けることはない。小さなインパクトであっても、「塵も積もれば山」となっていくからだ。

 しかし、本書は「絶対達成」のキーフレーズである「習慣=インパクト×回数」の「インパクト」を「絶対達成」シリーズで初めて扱っている。
 だからこそ、「アイデンティティ(自己認識)」を一発で変化させるノウハウをお伝えする。その方法が、前述した「儀式」なのだ。

「儀式」の細かい解説に入る前に、アイデンティティについてもう少し触れておこう。
 たとえば、結婚して「私は夫である」というアイデンティティに変化すれば、「妻を大切にする」という夫としての信念が生まれ、夫としての能力が芽生える。
当然、行動も変わるだろう。
 子どもが生まれて父親になれば、「私は父親である」というアイデンティティが生まれ、父親としての信念、能力が備わる。「父親になる自信がない」と言っていた人でさえ、父親らしく振る舞うようになるものだ。
 おとなしい人が「運転手」になったとたんに乱暴な運転をするのも、会社では厳しい上司が家に帰ったとたんにやさしいお父さんになったり、恐妻家になったりするのも、すべてアイデンティティが変わるせいである。

 課長に昇進したり、プロジェクトリーダーを任せられたり、国家資格をとったり、社内でトップの営業成績を出して「トップセールス」と呼ばれるようになったり……。

 こういった何がしかの「ラベル」を貼られることで、自分が何者であるかが変わる。
 地位や肩書きが変わり、「やらざるを得ない」という覚悟が決まるのはそのためだ。
 その結果、能力や行動が変わり、地位や肩書きにふさわしい人間になっていくのである。
 地位や肩書きにふさわしい人間だから、その称号(ラベル)をもらえるのではなく、先に称号を得ることで、その称号に見合った能力や行動が引き寄せられていくことが多いのだ。

「税理士の資格を持っているからといって、仕事ができるとは限らない」
「有名大学を卒業したといっても、いい人財かどうかわからない」

 という表現をよく耳にする。
 しかしながらその「ラベル」は、人のアイデンティティを変化させる強烈なインパクトがある。そのことも忘れてはならない。