食材の質以上に、食を共にすることを重視する
先日、デンマーク人の食に対する考えを知るため、シェアハウスに住んでいる友人にお願いして、ディナーパーティー兼グループインタビューを行いました。
そこでまず話題にあがったのは大学のラボに勤務するヘンリッテさんの職場で開催されるフードクラブの存在でした。フードクラブのメンバーは毎日ランチを共にするそうです。活動スタイルや雰囲気は、日本でいう大学のサークル活動に似ているかもしれません。
「フードクラブでは主催者の人がいて、どれくらいお金をつかったのか計算してくれるので、それで毎月払うの。職場の目の前にあるスーパーに手のあいている人が買いにいく。キッシュを焼いて持っていくこともあるけど、スーパーの買い物は20分くらいで済むから、楽かな」
それを聞いたイベントコーディネーターのソフィーさんがこう言います。「私も同じ。職場にキッチンがあるから、同僚10人のために1週間に2人決めえて、ライ麦パンやチーズ、お肉、トマトやサラダを買ってくるの。それで、みんなの分を用意するのよ。毎月払うのは大体1人150クローネくらい(日本円で2600円程度)」
続いてThe KaosPilotsを去年卒業したラグーナさんも、プライベートでディナークラブに入っている、と言います。メンバーは、ラグーナさんの近所に住んでいる人たちで、学生、社会人合わせて15人ほどいるそうです。
2週間に1度、開催したい人がfacebookで呼びかけて、毎回集まるのは7人程度。こちらは、参加する人は支払わず、ホストが金額を決めて自分で全て支払うスタイルです。
ラグーナさんはディナークラブが「家族の延長線上にあるもの」と語ります。もしディナークラブがなかったら一番恋しくなるものは?と聞くとこう返ってきました。
「お互いのストーリーをシェアすること。みんな違う人生を送っている。でも定期的にこうして一緒に食事することで、お互いの旅の一部であり、歴史の一部になるの。それがなくなるのは一番悲しいことね。
学校で起きたこと、どこのパーティーに行ったとか話はするけど、時々とても深い話もする。人生で抱えている問題、価値観、人間関係、信じていることについて話すの。そこは自分自身になれる場所。そうでならなければいけない。だってみんなが、先週話していたことはどうなったの?と聞くからね。上辺だけの会話ではないの」
ラグーナさんは独身ですが、結婚してもディナークラブの習慣は続けたい、と言います。彼女の知り合いで一軒家に住む夫婦が家の一部のフロアを他の夫婦に貸していて、食事を共にするそうです。彼女もそんなライフスタイルが理想だと言います。
デンマーク人にとっては食べるもの以上に、どのように食べるのかということの関心の方が高いようです。彼らの毎日の食生活を豊かにしているのは、食材以上に、一緒に食べながら人生の一部をともにできる人たちの存在でした。