例えば、衣服などの商品の陳列方法は、ハンガー陳列を基本とし、商品を畳む手間を極力省いています。その結果、1店舗あたりの従業員数(パートタイマー含む)は約4人と少数に抑えられています。さらに驚くべきことに、西松屋の社員数は695人と店舗数の1145店舗より遙かに少ないのです。

 また、ガラガラの広い店舗は、顧客体験だけではなく、従業員にとっても陳列などの作業がしやすい状態だといえます。

 加えて、駅前などではなく、郊外立地かつワンフロア、ロードサイドの出店というのも西松屋の特徴です。こうした戦略は賃料や建設費の圧縮につながっているとみられます。

西松屋のビジネスモデルから
学べる「3つのこと」

 では、最後に西松屋の「ビジネスモデル」を整理してみましょう。

 ビジネスモデルとは「誰に何を、どのように提供し、どのように儲けるか」を描いたビジネスの設計図です。顧客価値の提供、経営資源、プロセス、利益方程式の4つの要素で構成され、新規事業構想や既存事業の見直し、競合比較に活用されます。成功には4要素が合理的に相互補完的に作用していることが重要です。

 あらためて西松屋のビジネスを「誰に何をどのように提供し、どのように儲けるか」の視点で見てみると、西松屋は、「親子連れの顧客が本当に求めている顧客価値は何か」を深く洞察し、見た目には「ガラガラ」な店舗という形で実現し、標準化された低コストのチェーンオペレーションを徹底することで、「低価格」と「買い物のしやすさ(広い通路、探しやすさ、近隣での入手可能性)」という明確な顧客価値を顧客に提供しています。それは、多くの日本企業が持つ「手厚いサービスのホスピタリティーこそが顧客満足につながる」という常識とは一線を画すものです。