この西松屋の事例から、私たちビジネスパーソンが学べることは多岐にわたります。例えば、次のようなことが読者の皆さんのビジネスにも参考になるのではないでしょうか。
1.顧客が真に求める体験価値とは何か
自社の業界や業務における「常識」や「慣習」に対し、それが本当に顧客価値の向上や収益性改善に不可欠なのか、ゼロベースで問い直す視点を持つこと。
2.戦略とは捨てること
全ての顧客ニーズを完璧に満たそうとするのではなく、ターゲット顧客を明確にし、何を提供し、何を「あえて提供しない」のかを戦略的に選択することの重要性。西松屋は、手厚い人的接客よりも「圧倒的な低価格」と「ストレスのない買い物環境」を選びました。
3.手段は目的に対して合理的か
「誰に何を、どのように提供し、どのように儲けるか」はそれぞれ整合している必要があります。
「優れた戦略は、一見すると非常識(バカなアイデア)に見えるが、深く理解すると極めて合理的(なるほど)である」と言われます。西松屋の「意図的な閑散とした店舗空間」戦略は、まさにこの言葉を体現しています。
手厚い接客という業界の常識にあえて背を向け、顧客が真に求める「ストレスのない買い物環境」と「圧倒的な低価格」を、徹底したローコストオペレーションによって実現する。この合理的な仕組みこそが、西松屋の持続的な競争優位の源泉なのです。