専門CAや機内食に商機あり
地方空港の受け入れも課題
筆者がホンダジェットに日本でも活躍してもらいたいと願うのは、他にも理由がある。機体のメンテナンスをはじめ、機内サービスはケータリングやプライベートジェット(日本で認知されている呼び名。世界的には「ビジネスジェット」)専門のキャビンアテンダント(CA)など、関連事業における雇用の誘発が期待できるからだ。
機体のメンテナンスは運航上、必須のものであり、運航便数、就航地が増えれば必然的に拠点、人員を増加させざるを得ない。
ケータリングは、現在は銀座の老舗料亭などに頼んでいるようだが、富裕層インバウンドともなれば食のこだわりも強いので各地の郷土料理、その土地ならではの旬の素材を使った料理のニーズも高まるだろう。
また、プライベートジェット専門のCAの存在は知る人ぞ知るところだが、一般的な航空会社に比べると、破格の給与を得ることもある。ただし、要求される資質は非常に高いため、今は日本には極めて少なく、海外から呼び寄せて勤務させているというのが実態だ。日本が観光立国を目指すにおいて注目されるべき職種である。
他方、日本ではプライベートジェットの受け入れ環境の整備が進んでいない。羽田空港のような主要空港における発着枠は増えていないし、利用客に対してスペシャルな対応(機内での入国審査、機体横へ送迎車両の乗り入れなど)もできない。
現在開催中の大阪万博は、プライベートジェット利用促進の大きなチャンスであるはずだ。混雑度の高い伊丹空港は無理としても、関西国際空港は24時間運用空港であり、受け入れ余力がある。乗客はリムジンやハイヤーを利用するので、終電・終バスの時間は全く関係ない。空港の有効活用からも、こうした需要開拓を積極的に進めるべきである。
さらに今後は、地方空港の取り組みにも期待したい。日本は地方空港を造り過ぎた、赤字ばかりだという社会的批判にさらされてきたが、近年は空港のコンセッション(民間シフト)が進んでいる。
これまでプライベートジェットに関心を持ってこなかった地方空港も、現在は潮目が変わったといえる。円安で押し寄せるインバウンドによって潤う地域も出ているし、場合によってはオーバーツーリズムに悩んでいるほどだ。観光立国戦略で重視する富裕層誘致、地方分散に対して、プライベートジェットは鍵を握る存在になってしかるべきだ。
一例として、茨城空港はプライベートジェット受け入れを進めるように経営方針を転換した。佐賀空港も以前から熱心だ(背景には九州エリアの空港の生き残り競争もある)。