自然妊娠の可能性が低くなるとされる年齢ではあるが、可能性がゼロというわけではない。実際、40代前半で自然妊娠からの初産を迎える人もいる。

 すぐにでも授かりたい小川さんとしては、最初から凍結卵子を使って妊娠を試みたいと考えていたが、相手の心中を踏まえると、一足飛びに進むのは難しいと判断した。そこでまずは半年、自然妊娠を試してみて、難しければその時に考える、ということになったという。

「凍結卵子を使いたい」
と言われ戸惑う男性も

「凍結卵子を使いたいと言った時、パートナーは何て言うだろう」というのは、卵子凍結をした直後から小川さんが考えていたことだ。場合によっては、「受け入れられない」と拒絶されるケースもあるかもしれないと覚悟はしてきたつもりだ。同世代の友人らの話を聞く中で、不妊治療そのものに抵抗感を抱く男性も少なくないと知っていたからだ。

 私(編集部注/筆者)もこれまで、“自然に授かるのではない”という理由で、不妊治療に漠然とした抵抗感を抱く人にたくさん会ってきたからよく分かる。こればっかりは、理屈で説明できるようなものではないと思う。

 とは言え、彼の意見を聞いた時、心中、穏やかだったわけではない。「あなたは前妻との子どもがいるからいいかもしれないけど、私はいないんだから少しでも確率の高い方法から試したい」という思いもあったのは事実だ。と同時に、彼の思いを尊重したい気持ちも同じぐらいあった。

「だって、彼の気持ちを置いてけぼりにして妊娠したとして、果たして幸せと言えるのかなって……。彼の立場に立って考えたら、突然、付き合っている相手から“私は2年前に凍結している卵子があるから、それとあなたの精子とをクリニックで受精させて、なるべく早く妊娠したい”と言われたってこと。卵子凍結や不妊治療がどのようなものかも知らない人が、いきなりそんなことを言われても、考えたり受け入れたりするのに時間がかかるのも分かるなと……」