換気扇の音だけでなく他のあらゆる情報も取り入れるわけだが、情報や意識に到達する思考が多いほど人はクリエイティブになれる。換気扇の音を排除できる人は創造性に必要かもしれない考えも排除してしまっているということだ。

 換気扇の音に気が散る人は無意味な考えもたくさん浮かぶだろうが、最終的には重要な考えも浮かぶ。

 リーキー・アテンションはその時やっていることとは無関係なアイデアや考えを統合してくれ、それがまったく重要でない換気扇の音のこともあれば、重要な考えのこともある。ADHDで簡単に気が散るのはクリエイティブだという意味でもあるのだ。

 よく考えると、リーキー・アテンションから生まれる激しい思考の流れが創造性に欠かせないのは当然かもしれない。何かを創造する時、事前には何が重要なのかはわからないものだ。

 本を書く、会社を興すなど何でもいいが、最初は無関係だと思ったことが結果的に決定打となってすべてが正しい位置に収まるということもある。

書影『多動脳 ADHDの真実』『多動脳 ADHDの真実』(アンデシュ・ハンセン著、久山葉子訳、新潮社)

 情報を大量に取り入れ、あらゆる刺激に面白い可能性があると認識する脳だからこそ物事に新しい光を当て、他の人が思いつかないようなアイデアが湧いてくる。

 人をクリエイティブにする要素というのはすぐに気が散ること自体ではなく、精神的にオープンでフレキシブルなことであり、情報や刺激を多く受け入れてクリエイティブなアイデアをまとめていくことなのだ。

 ではリーキー・アテンションはADHDと関連があるのだろうか。

 ADHDは注目を向けている対象が広いことが多い。他の人よりも細かく、周囲で何が起きているかを認識している。邪魔な音や要素を排除するフィルターを持たず、珍しいアイデアも排除しない。

 つまりリーキー・アテンションを持っているのだ。