趣味のモトクロスを練習中、転倒して大ケガを負う
6月上旬の日曜日。大学に入った後、友人に誘われ、趣味でモトクロスを始めたAは、練習中にジャンプの着地に失敗してバイクごと転倒し腰と右足を骨折する大ケガを負った。すぐに救急車で病院に運ばれたが、そのまま入院することになった。
翌日、Aの母親から事故の知らせを受けたB課長は、夕方Aを見舞った。
「A君、大丈夫か?」
「はい、なんとか……。ご迷惑をかけてすみません」
「大ケガをしたと聞いてびっくりしたよ。具合はどうなの?」
寝返りを打てない状態でベットに横たわったAは、激痛の中、声を絞り出すように答えた。
「お医者さんの話だと腰椎(ようつい)と右足を骨折し、腰は手術が必要だろうと言われました。3カ月程度は入院するみたいです」
「そうか……」
試用期間中に3カ月休み、今後も営業の仕事は絶望的
翌日の朝、B課長はC部長にAの現状を報告したが、それを聞いたC部長は困った表情を浮かべた。
「A君のことは心配だ。しかしこれから仕事を覚える時期に、3カ月間も会社を休まれるのは痛いなあ……」
「そうですね。昨日A君と会ってから、付き添っていたお母さんにも話を聞きましたが、医者からは『退院後もしばらくはコルセットを着用し、松葉杖を使うことになる』と言われたそうです。この様子だと、退院後も営業の仕事はしばらく無理でしょう」
営業職として働いていたAにとって、このケガは致命的に思えた。営業といっても、商品を届ける配送業務を兼ねているため、退院後もしばらくは商品を荷台に移して取引先の会社や店舗に運ぶことができないし、もとより車に乗ることも腰に負担がかかるので無理かもしれない。
「C部長、営業の仕事が無理なら総務課などの事務職に配置転換することはできますか?」
「確かにデスクワークならいけるかもしれないけど、それは無理。本社や各営業所での内勤はどこも人手は足りている。むしろ余剰人員を営業や倉庫担当に配置転換することを考えているくらいだよ」
「うーん……」