このまま辞めさせるのはもったいないですよ

 D社労士のアドバイスを受けたC部長は、その後、Aの処遇についてB課長と話し合った。

「A君は、今の仕事にすごくやる気を出しています。私のアドバイスも素直に聞き入れ、同行している取引先からの評判も上々です。確かに、会社を休めば一本立ちの時期が遅れるので課としてのダメージは大きいですが、そこは何とか私の方でカバーします。このまま辞めさせるのはもったいないです。もう少し様子を見ましょう」

「するとB課長の考えは、当面は欠勤扱いにするということだな?」

 B課長はうなずいた。

「わかった。試用期間を3カ月間延長して、終了後の具合で判断しよう」

君が戻ってくるのを待ってるよ

 翌日の夕方、B課長とC部長はAとAの母親に面会し、「本来6月末で終了する試用期間を9月末までに延長すること」「少なくとも入院期間中は欠勤扱いとし会社から給料は出さないが、そのかわりに傷病手当金を申請すること」「社会保険料の本人負担分を徴収すること」などを説明した。

 Aは了承し、「ありがとうございます。早くケガを治して、仕事がんばります」と涙を流しながら喜んだ。その様子に、B課長も思わず涙腺がゆるんだ。

「コンビニで『練乳山かけババロア』が新発売になったから、今度仕事が終わったら一緒に食べような。君が戻ってくるのを待ってるよ」

 その後、腰椎の手術を受けたAは順調に回復し、7月上旬、B課長に「8月初旬には退院できそうです」とメールで報告した。この知らせを受けたB課長は、心から喜んだ。

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