疲れがたまりすぎているときは、「今日一日だけ」を意識しよう

 ――疲れがたまりすぎて、目標どころではないときはどうすればいいでしょうか?

川野:目標を考えることは、体力が枯渇している人には難しいかもしれません。そういうときは、「今日一日だけやればいいんだよ」と、自分で言ってあげることが大事ですね。

――ふと「このままで将来大丈夫なのか?」と考えてしまうこともあります。

川野:結局、「先のこと」を突き詰めて考えていくと、その昔お釈迦様も悩んだように、誰もが避けられない「生老病死」という現実にたどり着くのではないかと思います。

誰でも平等に年を取って病気になり、最終的にはこの命を終えてゆくわけですよね。

だからこそ、「今日一日を大事にする」という考え方が大切になってきます。

「日日是好日」という禅語があります。

この言葉が教えてくれているのは、「いい日も悪い日もあるけれど、毎日を丁寧に生きていこう。今日一日を精一杯生きてみよう」という心のあり方です。

「今、この瞬間」に集中することが幸せを生む

――「今この瞬間を大切にする」ことは、幸福感にも関係してくるんでしょうか?

川野:はい。ハーバード大学の研究でも、私たちがもっとも幸せを感じるのは「今この瞬間」に集中しているときだとわかっています。

つまり、目の前のことに意識を向けている時間こそが、幸福感につながるんですね。

――逆に、何もしていないときほど、つい頭の中でいろいろ考えてしまって疲れることもありますよね。

川野:私たちが頭の中でぐるぐる考えているときというのは、いい考えばかりが出てくるわけではなく、過去の後悔や未来への不安も出てきます。

だからこそ、「今に意識を向ける」ということがすごく大事です。

――「自分の感覚を取り戻すヒント」が、『瞬間ストレスリセット』にもたくさん書かれていますね。

川野:そうですね。本書には「今を生きる方法」が多数紹介されています。どれかひとつでも、やってみようと思える方法に出会えれば、それだけでも意味があると思いますよ。

川野泰周(かわの・たいしゅう)
精神科・心療内科医/臨済宗建長寺派林香寺住職
精神保健指定医・日本精神神経学会認定精神科専門医・医師会認定産業医
1980年横浜市生まれ。2005年慶應義塾大学医学部医学科卒業。臨床研修修了後、慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。2011年より建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行。2014年末より横浜にある臨済宗建長寺派林香寺住職となる。現在寺務の傍ら都内及び横浜市内のクリニック等で精神科診療にあたっている。
うつ病、不安障害、PTSD、睡眠障害、依存症などに対し、薬物療法や従来の精神療法と並び、禅やマインドフルネスの実践による心理療法を積極的に導入している。
著書に『会社では教えてもらえない 集中力がある人のストレス管理のキホン』(すばる舎)、『半分、減らす。「1/2の心がけ」で、人生はもっと良くなる』(三笠書房)、近著には『禅僧の精神科医が教える 頭と心が整理される1分の使い方』(大和書房)などがある。