「女の子が2人で、上の子はこっちの大学に入ったので、たまに東京で会っています。子どもとは会いたいと思いますけど、もう徳島の家には帰るつもりはありません」
白井さんはきっぱりとそう言った。
この白井さんばかりではなく、ほかにも同じく50代の女性キャスト・大林さんは、長年連れ添ったご主人が亡くなったことをきっかけに地元の金沢から上京し、キャストになったと言っていた。
たしかに白井さんも大林さんもオンステージでいきいきと楽しみながら働いている姿が印象的だった。彼女たちの思い切りのいい生き方を見ると、やはり女性は強いのかもしれないと思ったものだ。

カストーディアルキャストの橋本君は、大学卒業後、某ホームセンターに就職して早々、そこがブラック企業だと気づいたという。
「品出しがチョーたいへんなんですよ。ソファーとかベッドとか鉄パイプとか開店までに並べるだけで死にますよ。で、閉店後も仕事があって夜11時とかまで店にいて、残業代もほとんどつきませんから」
彼は入社して1年弱で辞めたという。
その後、いくつかのアルバイトを経て、ディズニーランドに専業キャストとして勤務する彼はまだ23 歳、ここでも非正規雇用のアルバイトである。ブラック企業に勤めた彼にはディズニーランドは〝夢の国〞に映ったのかもしれない。
「で、そことくらべて、こっちはどう?」
冗談めかして聞いてみた。