「自分の声が嫌いだった」原菜乃華が“ご機嫌な人間”を演じきるまでに起きたこと【朝ドラ『あんぱん』】第49回より

「実は以前、
自分の声が嫌いだった」

「私、実は以前、自分の声が嫌いだったんです。いまでも好きかと聞かれたら、そうではないのですが(笑)。

 声のトーンやしゃべり方を時と場合と人によって変えようと思っていないのですが、自然に変わってしまうんですよ。例えば、お母さんが子どもを激しく叱りつけているとき、学校から電話がかかってきて『はい、もしもし○○の母です』とよそ行きの声で出るようなことと同じ感覚で、コロコロ変わっちゃうんです(笑)。

 役や現場に合わせて、無理しなくても、いくらでも変えられる声色を持っていることは武器なのかなと最近思うようになりました」

 基本、明るく元気で爽やか。でもその場の雰囲気でどんどん変化して、見ていて飽きない。そんな人物が愛される。原菜乃華さんが演じるメイコはそういうキャラクターのようだ。

 戦争が終わり、メイコたちの生活も変わっていく。今後のメイコはどうなっていくのだろう。

「戦争で身近な大切な人をたくさん失っているので、メイコに限ったことでなく、朝田家の人たちはいつ何があるかわからないから、大事な人にちゃんと思いを伝えようとか、自分の夢にはいったん挑戦してみようと考えるようになって、とても強くなったと感じています。

 メイコも性格などには大きな変化はないですが、持ち前の素直さや、天真爛漫さが大人になって自分のやりたいことをやっていくにあたり、行動力の強さにつながっているように思います。

 これからは、皆に守られている末っ子から一人の女性としてたくましく成長していく姿が描かれていきます。それでも相変わらず、泣いたり笑ったり、ストレートなところは残しつつ。素直なところとたくましさをうまく演じ分けられたらいいなと思いながら演じています」

 家族の変化として、第16週の第79回で釜次(吉田鋼太郎)が亡くなる。その前にメイコたちはよさこい節を歌う。これは豪(細田佳央太)の壮行会でも三姉妹で歌ったものだ。

「この場面では涙が止まらなくなりました。おじいちゃんに最後に聞かせるよさこい節は楽しくきれいなものを聞かせたいと思ったのですが、涙の制御が効かなくて。何度、同じ芝居をしても涙が枯れないという経験は初めてで、自分でもびっくりしました。

 朝ドラでは週初めの月曜日、1週間分のリハをするのですが、リハから涙が止まらなかったんです。本番に感情のピークをもっていきたいから、リハでは我慢しようと思っても、涙が自然と溢れてきて。これは朝ドラならではなのかなと思いました。

 とても長い期間、同じ役をやって、同じキャストの皆さんとずっといっしょにいる現場だからこそ、ここまで自然に涙が溢れてきたのではないかと思いました」