「こちらも都合があるのです。3カ月前の11月13日。うちの社員があなたに注意を受け泣かされています。その4カ月前、同様に注意を受け泣かされたパート社員は、翌日退社しています。その方は、『会社で訴えを起こしてください』と、言って辞めて行きましたが、実情の詳細を掴めなかったことから、今日まで、延びていました。
その前年も2件記録があり、そのまた前年も1件の記録があります。ほとんど手口は一緒で、『あると言われた本がない』ことで、しつこい攻めを受け、対応ができず泣かされ、当時の上司も追い払われて、遠方から見ているという情けないことになっていました。長いことあなたをお待ちして、やっと会えたのです。よろしくお願いします。今井様」
何度も名前を呼びながら
相手の動揺を誘う作戦に
この名前を連呼する行為は、相手の気持ちを萎えさせます。
「ところで、お叱りにはどんな理由が存在したのですか。今井様」
と、姓を繰り返します。
「嘘を言って客を引き留めているじゃないか」
「そうですか、それでも無視して帰れば帰れますよね。あなたが帰った後、閉店近くから社員全員で、要望された本を探しました。それが、とんでもないところに、逆さまに伏せてあったり、背表紙を奥にして棚に置いてあったり、他の書籍の下の在庫箱にあったりしています。それが延べ3回続いています」
「それは、俺ではなく他人が置いたのかもしれない。俺が置いた証拠はあるのか」
と、相手は少し上向きになり反りかえるような動作をしました。
「残念ですね、あなたは以前店長に名前を聞かれたとき答えています。その店長は、あなたがお帰りになるとき、尾行しておりました。その帰りに立ち止まった場所から、それらの本が見つかっています。それが、何よりの証拠です」
相手は下を向きました。
「恐喝で警察に通報します。そうすれば、その証拠を固めてくれることでしょう。訴訟はその辞めたパートが起こします。営業妨害を被ったのは当社になります」