双方譲らない攻防戦
どう決着をつける?
「こんにちは、初めまして。お忙しい中、こんなところにご足労願いましてありがとうございます。お名前を伺えますか」
「何で、用件も聞かずに名前を言う必要があるのか」
「では、失礼ながら、お名前が分かりませんので『あなた様』と呼ばせていただきます。私のところに入っている情報ですと、書籍の店頭でうちの女性社員がよく泣かされるとお聞きしまして、ぜひ会いたいと思いました。当然当方に非があることでしょうから、お詫びするのも私の役目です。お客様相談室長の関根と申します。よろしくお見知りおきを」
と、先鞭をつけます。
「なぜこんなところへ連れて来られなければならないのか、合点がいかない」
「店頭まで戻りますか、そこでも一向に差し支えはございませんが」
と、その会話を遮ります。
「俺が何をしたというのだ」
「その詳細をこれからお聞きして、今後どう対応させていただくか考え、非があれば詫びることでお許しを願いたいのです」
「そんなことはどうでもよい」
「場合によっては脅しで訴えることも考えの中の1つにはあるのです。私まで恐喝されたとは恥ずかしくて言えませんので、慎重に受け答えをしておりますが」
「いいよ、今日は帰る」
と、相手は立ち上がろうとします。
「残念ながら、そのドアは自動で施錠になっていますから、開きませんよ」
もちろんウソです。
「『今井様(仮名)』と、お互いに腹を割って正直なことをお話ししましょう」
自分の姓を呼ばれてギョッとして、Eさんの目が大きくなりました。
「安夫さんでよいのですよね」
と、今度は名を呼びます。さらに、目が…。
「俺が何をしたというのだ、帰りたい」
その通り、書籍売り場に遊びに来ていきなりお客様相談室に連れて来られ、文句を言われているのですから、帰りたいのは当然です。