
「嵩、たっすいがーはいかん!」とのぶ
焼け跡以来の再会
一部始終を見ていた琴子は、心配しているのぶに「十中八九落ちたと思うわ」と報告。
その前をうなだれた嵩が帰っていく。
「嵩、たっすいがーはいかん!」と声をかけるのぶ。
嵩とのぶは、あの焼け跡以来の再会であろう。
闇市で語らう嵩とのぶ。
「なんかまた差がついちゃったなあ」と引け目を感じつつ、いま売っている「ガラクタのなかに希望(HOPE)があった」と話す嵩。この「HOPE」はいまや東海林のもとにあることを嵩ものぶも気づいていない。
アメリカの雑誌の記事や漫画や挿絵のクオリティの高さに「戦争でも 娯楽でも負けたんだな」とつぶやく嵩。
「だから僕はいつか必ず、あれよりもっと、世界一、おもしろいものを作りたい」と思ったものの、そんなことができるだろうかとくよくよしている。のぶは「一番大事ながは情熱やない? 嵩はそれを持っちゅうがやき」と励ます。
そもそもなんで新聞記者? 健太郎が言うように漫画を描いたほうがいいのではないだろうか。
「死んだ父さんが新聞記者だったから、それで受けてみようかなって」
何度もレビューに記しているが、嵩のモデル・やかせたかしの父は朝日新聞の記者で、中国特派記者として中国に行き、任地で亡くなった。
「私の人生において、3つのことは生涯やっていく。それは絵と詩と雄弁だ」と書き残したそうで、やなせは父の思いを継いだかのように、絵も詩も書き、多くの著書を残しそこでひじょうに雄弁だった。
受ける会社を間違えたという嵩だったが、今度雑誌も作ると聞いて「それは受かりたかったな」と肩を落とす。
「うちが面接担当者だったら合格や」とのぶに言われ、嵩はちょっと嬉しそうな顔になる。ほかの誰が彼を不合格と言ってものぶが認めてくれたら嬉しいのだろう。このときの北村匠海の表情が相変わらず巧い。