謝らない人の心理背景とは?

 では、この種の人物はなぜ謝らないのか。それにはいろんな要因が考えられるが、主な要因としてここでは4つあげることにしたい。

(1)自信がないので、弱みを見せたくない

 絶対に謝らない人というと、偉そうにしているから、自信満々な人だろうと思われがちである。だが、はたしてそうだろうか。

 心理学の研究では、ほんとうの自信のない人ほど謝らない傾向があることが示されている。自分のミスを認めて謝るということができないのは、ほんとうは自信がないからなのだ。

 ほんとうに自信があるなら、頭を下げて丁重に謝るくらいのことで、そのプライドが崩れることなどないはずだ。むしろ、自分に非があるなら、それを潔く認め、相手を尊重し、礼儀を守ることで、そのプライドは守られる。非礼なことをしたなら、そのプライドに傷がついてしまう。

 ゆえに、謝るべき場面で謝らないことがある人は、じつは自信のない人が多いのだ。人から見下されるのではないかといった不安が強いため、自分の非を認めて謝罪することに抵抗があるのだ。自分の弱さを露呈することへの恐れが、謝罪という適切な行動を阻害している。

(2)比較意識が強く、謝罪は敗北と思っている

 謝らない人には、他人との比較意識が異常に強いタイプがいる。自分と相手とどっちが上かといった比較図式が常に頭の中にある。

 どっちが上かという比較図式においては、頭を下げることは向こうの方が上になるとみなす。ゆえに、謝ることには強い抵抗がある。

 自分に何らかの落ち度があり、謝罪を迫られた場合、「悪いことをした」「迷惑をかけた」「不利益を与えた」といった意識が活性化され、申し訳ないといった思いに駆られて素直に謝罪するのが普通だ。

 ところが、このようなタイプは、そうした意識よりも、「相手が優位に立ってしまう」といった意識が活性化される。そのため、申し訳ないといった思いよりも、絶対に謝りたくないといった思いに駆られる。どっちが上かという比較図式の上では、「謝罪=敗北」なのである。

 このようなタイプの人物に、どのような迷惑をかけたかをいくら理詰めで説明しても、どっちが上かという比較図式に縛られた人物には、冷静に理解する気持ちの余裕がない。負けたくない、下に位置づけられるのは嫌だ、マウントを取られたくない、といった思いが強すぎて、真っ当な理屈も頭に入っていかない。