惜しくもオーディション落ちた他の女優がヒロインだったら?

朝ドラヒロインが今田美桜じゃなかったら…やなせたかしのリアル妻っぽい「しっかり者」とは【あんぱん第72回レビュー】『あんぱん』第72回より 写真提供:NHK

 やなせたかし夫妻をモデルにしているとはいえ、『あんぱん』の世界線はふたりが幼馴染設定で、実際とはかなり変わっている。史実に寄せて作られていたとしたら、のぶは琴子のようだったかもしれないが、『あんぱん』ではそうではないのだ。

 琴子役の鳴海唯もヒロインオーディションに参加して、惜しくも落ちている。蘭子役の河合優実、メイコ役の原菜乃華もヒロインオーディションを受けている。それぞれがのぶだったら、どんなのぶになったか――違う世界線を想像するのも楽しい。

 琴子役の鳴海唯はオーディションのとき「アンパンマンのような人になりたい」と発言したそうだ。「愛と勇気を他者と共有できる人になりたい」という意味なのだとか。

『あんぱん』に関する鳴海のインタビューがいくつか世に出ているが(筆者も取材している)、そこで驚くのは、そのときはまだ「アンパンマン」が題材になるとは知らなかったという鳴海の発言だ。

 朝ドラのヒロインオーディションの内容を知らないまま受けることもあるとは。ずいぶんと雲をつかむような目標に向かって頑張らないとならない大変なお仕事である。

 第72回のメイコはきれいな歌声で「東京の花売り娘」を歌って、のど自慢に出演する夢を見ている。澄んだ声と純真な雰囲気のメイコは、昔ながらのヒロイン風味がある。

 閑話休題。嵩はブランクをものともせず、イラストをみごとに描いたが、急いで新聞社に連れられてきたため足がつってしまう(軍隊で鍛えた体力ももはやないようだ)。

 でも活躍したおかげで新聞社に入社できた。こうして、のぶの「強力な後押し」(by語り〈林田理沙〉)で嵩は晴れて同僚になったのだ。

 のぶは月刊くじらの編集作業が佳境を迎えていた。ここで疑問だった月刊「くじら」のテーマとその名前の意味が語られる。「くじらのように余すことなくすべての記事が読み応えのあるものにしたいです」とのぶは東海林の理念に寄り添って語る。