一方、「あの人は専務の太鼓持ち」、「調子がいいだけで大して仕事をしていない」というように、現場から見ていると腹立だしくなるような人が重宝される場合もあります。しかし、それだけで組織の上層まで出世できるほどビジネス社会は甘くはなく、いずれ化けの皮は剥がれます。

 では、「仕事ができないのに出世する人」と「優秀なのに出世できない人」には、具体的にどんな違いがあるのでしょうか。

「部長止まりの人」と「役員になれる人」
“たった1つ”の違い

 求められる能力として現場レイヤーとマネジメントレイヤーで大きく異なるのは調整力です。

 とくに大企業のマネージャーは上層部と現場を通訳する役割や、いわゆる根回しを行いチームや部門を円滑に動かすような立ち振る舞いが求められます。

 社外の取引先であれば結論だけ伝えればよくても社内ではそうはいかないことが多く、こうした動きを丁寧にやれる人は経営陣から期待されやすくなります。

 調整力も含め、結局どんな人が出世しやすいかと言えば、現場で一定水準以上の仕事ができることを大前提として、「上からの覚えがめでたい人」です。それはどんな人かを一言で言えば「経営者と会話ができる人」です。

 社長や役員が求める水準の会話をするには、経営者視点を持っていないと会話が成り立ちません。もちろん社長と同じものを同じ角度で見る必要はありませんが、少なくとも同じ立ち位置からものを見て「あれはこうなっているね」、「そうですね、こんな風になっていますね」と話が通じるかどうかが重要です。

 上から俯瞰する視点を持ち、全体を見渡すことができるか、といってもよいでしょう。これが現場視点しか持っていないと目の前のものしか見えていないので、「え、そうですか?」と会話が成り立たないのです。

 もっといえば、現場の延長線上に経営者視点はありません。これを養うには会社が組織として育成に取り組む必要があります。もし会社でそうした育成の取り組みがなければ、個人で努力していくほかないでしょう。