そして、これは今の日本人も変わらない。
政府や専門家が、我が国には「財源」がないので、消費税廃止なんてしたらとんでもないことになるという予想をしても、耳を傾けない国民がたくさんいる。「日本の技術力は世界一」「優良資産がたくさんあるので実は財政はちっとも悪くない」など自分たちに都合のいい思い込みが強く、「日本には財源がない」という不都合な話がどこかへスコーンと飛んでいってしまっているのだ。
データを示して反論する人は「財務省に洗脳されている」「どこの国の工作員だ」などとボロカスに吊し上げられる。こういう世論の“暴走”を受けて、政治家も「減税できるかどうかはやってみなくちゃわからないだろ!」とポピュリズムに流れ始めている。
威勢のいいことを言って、「非国民」を口汚く罵れば罵るほど「愛国政治家」としてもてはやされるので、言動がどんどん過激化しているのだ。
我々は「資源がなくても戦争に勝てる」と思い込んで世論が暴走した「前科」がある。ということは、「財源がなくても減税できる」と思い込んで、世論が暴走する可能性もかなり高いのではないか。
(ノンフィクションライター 窪田順生)
