このように酷い財政状況の国が、参政党の神谷代表が主張しているように、消費税をゼロにするために150兆円の国債を発行したら、国際社会で「日本の信用」はガクンと低下することは言うまでもない。

 減税派の皆さんが「自国通貨を発行している国は国債をどれだけ発行してもいいんだよ」と喉を枯らして訴えたところで、世界を説得するのは難しい。MMT(現代金融理論)はブームが過ぎて経済学の世界では「異端視」されており、世界のどこを探しても実践している国はないからだ。

 また、「消費税をゼロにすれば個人も企業もバンバンお金を使うのですぐに150兆円くらい回収できる」という主張に関しても、冷ややかな目で見られるだけだ。実はコロナ禍の時、欧州の一部の国が期間限定で消費税減税に踏み切っているのだが、そこで個人も企業も減税分を貯蓄に回しており、消費刺激効果はほとんどなかったことがわかっている。

 つまり、「消費税廃止」は国内世論では「日本経済復活の切り札」として拍手喝采されているが、世界から見ると「借金多すぎてヤケクソになっちゃったの?」と心配されるレベルの“暴走”なのだ。

 ただ、歴史を振り返れば、日本人がこのような“暴走”をするのは珍しいことではない。「日本はスゴイ!」「外国人の言うことなど信用できるか」という精神主義に走って、データやファクトを軽視して自滅というパターンを繰り返している。その最たる例が、今年で敗戦後80年を迎える太平洋戦争だ。

 よく言われることだが、日米開戦前、当時の政府や軍部のエリートたちは「日本必敗」を予想していた。緒戦は優勢でも我が国には「資源」がないので1年も経過すると消耗し、最後は100%ボロ負けするという結果が、何度シミュレーションしても導き出されたのだ。

 しかし、当時の日本の多くはそんな話に誰も耳を傾けなかった。「日本軍は世界一強い」「神国の日本が負けるわけがない」という思い込みが強く、「日本には資源がない」という不都合な話はどこかスコーンと飛んでいってしまっていたのである。

 だから、「戦争を回避する道を探そう」なんて言おうものなら「非国民」「売国奴」とボロカスに吊し上げられた。こういう世論の“暴走”を受けて、軍部も「戦争というものはやってみなくちゃわからないだろ!」とデータやファクトを軽視していったのである。