そこに加えて、国際社会がドン引きしているのは、最低賃金引き上げに怒っている人たちが唱える「減税すれば日本経済は復活する」という考え方である。
戦後80年、令和の「消費税廃止」と
「日米開戦」のゾッとする共通点
それがよくわかるのは、国際金融と為替相場の安定化を目的として設立された国際通貨基金(IMF)の反応だ。日本国内で「消費税をゼロにすれば日本経済復活だ!」「いや減税はまずいからまずはカネをバラまこう」という世論が盛り上がっていることを受けて、IMFのコザック報道官が7月24日の定例記者会見で、どちらも「避けるべきだ」と苦言を呈した。
「高水準の債務残高などを踏まえれば、日本の財政余力は限られている」(時事ドットコムニュース 7月25日)というのである。
「そ、それはそのIMFとやらも財務省に洗脳されているからだろ」と思いたい方たちのお気持ちは痛いほどわかる。しかし、残念ながらこれは洗脳でもなければ、ディープステートの陰謀でもなく、「客観的事実」を冷静に分析すれば辿り着く当然の結論だ。
日本は世界トップレベルで少子高齢化が進行しているので、社会保障負担も世界トップレベルで重くなっている。現役世代が急速に減って、医療や年金を受け取る高齢者が急増しているからだ。
ただ、それでもすべてを賄えないので国が足りない分を補填(ほてん)してきた。その結果、日本の政府債務残高は2023年度末で1442兆円まで膨張、対GDP比では237%にものぼる(経済界や有識者の有志でつくる民間の政策提言組織「令和国民会議」の発表数値)。
これがいかに異常事態なのかというのは他の先進国を見ればわかる。水準はどんな感じかというと、アメリカは121%、イギリス101%、ドイツ64%。G7はもちろん、先進国の中でもかなりひどいことになっていて、レバノンより良くて、スーダンより悪いレベルだ。
少し前に、石破茂首相が国会で「日本の財政はギリシャより悪い」と発言して「首相のくせに、日本の信用を貶めることを言うなんてけしからん」と攻撃されていた。しかし、国際社会から見ればそれほど間違ったことは言っていないのだ。