それで大西賢くん(当時社長、現会長)に京セラのフィロソフィを渡して、これを参考にJALフィロソフィをつくってみてくれと言った。彼らは十数人で、2ヵ月くらいかかってつくり上げました。

 一方で、幹部社員を集めて私の哲学の話を始めました。「人間として何が正しいかで判断する」とか言うと、高学歴ばっかりの幹部連中は、非常に浮かぬ顔をしている。「そんなことはじいさんに言われんでも知ってるよ。子どもを諭すような道徳観を押しつけて……」と顔に書いてある。

「子どものころ、親や先生からも聞いたことがあるだろうが、それに基づいて日々の判断や行動をしているのか。それじゃ知っているうちに入りません。あんた方がバカにする子どもじみた道徳観みたいなのを、実行もしていない。それで大会社が経営できるわけがない」とカンカンに怒った。

 来る日も来る日も、みんなをとっ捕まえて叱っていたら、何の縁もゆかりもない年寄りが、給料ももらわず朝から晩まで必死でそんなことを説いているのが相当に迫力あったんでしょうな、そのうちに心を動かして、なるほどと思う人が出てくる。1人現れると、続いて2人、3人と出てきて、一気にフィロソフィが浸透していった。


どんな企業も甦らせる
稲盛「哲学」と「実学」のすべて

 インタビューはまだまだ続きますが、続きは本誌で――。

 『週刊ダイヤモンド』6月22号は、京セラ、KDDIを創業し、日本航空の再建にも取り組んだ稲盛和夫氏を特集しました。稲盛氏はすでに名経営者としての盛声を固めていながら、78歳にしてあえて火中の栗を拾うように日本航空の再建を無報酬で引き受けました。