平成25年の税制改正で、相続税が大増税! そして増税もさることながら、相続にからむトラブルが急増中。しかし、実際に相続を体験する前は、どんなことがトラブルになるのかさえ、わかりません。新刊『新版 相続はこうしてやりなさい』から、相続専門の税理士が相続税のイロハを抜粋してご紹介します!
分割できない遺産があると必ずモメる!
遺産は「土地付き一戸建て」が一番危ない
遺産は、親の住んでいた「土地付き一戸建て」だけ……。このようなきっちり分けられない、すぐに現金化ができないなどの不動産はモメる原因となる可能性大です。
例えば預金のような現金がほとんどない、親の遺産は「土地付き一戸建て」だけのようなケースを想定してみます。
相続人は男兄弟2人です。長男が親と一緒にこの自宅に同居しており、現預金はお葬式やお墓代等の諸費用で全てなくなってしまいました。
さあ、この土地付き一戸建てをどのように相続するのでしょうか?
次男がこのように主張します。「兄貴だけ家を相続するなんてズルいよ、家は兄貴にあげるから、その分現金で俺にくれよ」
しかし自宅の価値は数千万円で、それに見合った現金を次男に渡す資力は長男にはありません。そこで、相続する自宅を長男と次男の共有名義にすることも考えられますが、今の家には妻と子どもも住んでおり、自分に万が一のことがあった時には家族に自宅を残してあげたいと長男は考えています。また共有にした場合、もし今後、次男が亡くなった場合には、さらに権利関係が複雑になってしまいます。
こうなってしまうと八方塞がりです。
権利関係が複雑になってもあえて仕方なく共有状態にするか、もしくは将来にわたり分割して現金を次男に渡す、あるいはその家を売却してその代金を分ける…といった方法しかないでしょう。実はこのような問題が多くの相続で起きています。
このケースでも事前に対策を立てられれば、親が遺言を作成して共有名義を防ぐといったことや、相続する「土地付き一戸建て」と同額、もしくは半額程度の現預金を工面する方法を探すこともできたはずです。
このように「土地付き一戸建て」に限らず、現物を分割することができない不動産(土地や家)をお持ちの方は相続時に注意が必要です。現預金のように分けることができるものであれば、話し合いで何とかなりますが、不動産はそうはいきません。
「土地付き一戸建て」を含め相続財産の中に不動産がある方は、相続に向けて準備や対策が必要となるでしょう。