Photo:EPA=JIJI
円相場を語る際、日本ではドル円のレートばかりに注目しがちです。ですが、円の強弱を正確に捉えるには、ユーロ円やポンド円などのドル以外との為替相場、「クロス円」のレートを見る視点が欠かせません。実際、足元ではドル円が横ばい圏でも、クロス円では歴史的な円安水準が目立っています。連載『ビジネスパーソンに必須!経済&ビジネスの最重要キーワード』の今回のキーワードは「クロス円」。長期推移も踏まえ、円の立ち位置を読み解きます。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
ドル円だけでは見えない円安
「クロス円」で分かる通貨の序列
今回のキーワードは「クロス円」です。
あまり聞き慣れない言葉かもしれません。クロス円とは、米ドル以外の通貨と円の組み合わせを指します。例えば、ユーロ円、ポンド円、オーストラリア・ドル円といった通貨ペアです。
では、なぜクロス円と呼ぶのでしょうか。為替市場では、基軸通貨であるドルが取引の中心です。実際、取引量の多い通貨の多くは、ドルを軸に売買されています。BIS(国際決済銀行)統計の為替市場における取引量を見ても、ドルは依然として圧倒的な存在感を持っています。
そのため、例えば円とユーロを取引する際にも、市場ではドルを介した価格形成や裁定の考え方が強く働きます。こうした「通貨をクロスさせる」発想から、ユーロ円やポンド円などを総称してクロス円と呼ぶのです。
私たち日本人は、為替レートというと、どうしてもドル円ばかりを見がちです。しかし、それだけでは円の世界における立ち位置を見誤る恐れがあります。円の強弱を正確に見るには、対ドル以外の相場にも目を向けることが重要です。
2025年の年初は1ドル=150円台後半で、現在は150円台半ばです。ドルに対しては、円はやや持ち直しているようにも見えます。ところが、ドル以外の通貨に対しては、史上最高値の更新、あるいは久しぶりの高値更新が相次いでいます。
実際、ユーロ円は26年1月23日に1ユーロ=186円86銭を付けました。ポンド円も2月4日に214円99銭まで上昇し、豪ドル円は2月9日に110円78銭を付けています。タイ・バーツ円も1バーツ=5.1円前後まで上昇し、1997年7月の変動相場制移行以来の高値水準にあります。
ここからいえるのは、25年の年初来の動きに限ってみれば、円もドルも相対的には弱い通貨だったということです。両通貨とも、他の主要通貨に対しては値下がりしやすい局面が目立ちました。
25年は、トランプ関税を巡る先行き不透明感もあり、ドルが売られる場面が少なくありませんでした。ただし円も、他国と比べた金利水準の低さなどから、積極的に買われる通貨にはなりにくい状況でした。
その結果、ドルと円以外の通貨が相対的に強くなる、という構図になったわけです。クロス円の動きを見ることで、円の世界における立ち位置をより的確に捉えられる、という点がお分かりいただけるのではないでしょうか。
次ページでは、さらに長い目線で、円と各国通貨の関係を見ていきます。ドル円だけでなく、クロス円の長期的な動きに注目すると、円相場の見え方は大きく変わってきます。







