日本の投資家にババを引かせる「ジャパニーズ・テイクアウト」
こうして株価が上がり、「アベノミクス成功だ」と熱狂し始めると、5月の初旬には、提灯に灯をともした連中はさっさと売り抜き、今度は空売りも始めました。提灯持ちの後についてきた人々は皆大損しました。酷い話ですが、これは「いつものパターン」です。
海外の政府の人々もアベノミクスは賛成だと言っているという報道はたくさんなされました。なぜか。彼らは自分の資金はもう引き上げたくて、代わりが欲しいのです。バブルの形成時、最後から一人手前までの参加者は、皆値上がりで儲けます。「最後の買い手」がババを引いて大損します。
日本の投資家はいつも遅れてやってきて、最後にババを引いていってくれるかっこうの売りぬき先なのです。これもパターン化し、「ジャパニーズ・テイクアウト」と呼ばれています。欧州の中小金融機関、中東の王様、日本の投資家などを、どうバブルの最後に巻き込むかは、彼らにとっては重要な課題です。彼らは「買ってるよ、買ってるよ」ということはメディアにどんどん流しますが、「もう逃げるよ」という予告などしてくれません。日本のメディアの多くは、彼らにとっては証券会社のレポート書き(セル・サイド・アナリスト)同様に、使いやすい道具にされがちです。
そういうゲームなのだということを知って、海外のあらゆる報道に接し、「真実を言っている小さな声」に耳を傾け始めれば、世界は全く異なる姿に見えてきます。しかし日本の報道の多くは「政府寄りの聞こえの良い、大きな声の人の意見」を採り上げがちで、「大勢が言っているのとは異なる意見」は、あまり掲載しません。
英文の新聞、オンライン誌、ブロガーの意見などを細かに拾って行けば、誰が「提灯持ち」で、誰が真の意見を言っているかは、自ずと判断できるようになります。
もっとも日本のメディアを十把一絡げにして批判することは間違っています。例えば『文芸春秋』は4月号に拙著「アベノミクス『危険な熱狂』」という論文を掲載してくれました。『日刊ゲンダイ』は一流経済紙とは言えないと思いますが、中産階級の庶民の視点で、正しい意見を論説するように努めておられるように拝察しています。