どうすればより多くの読者に魅力が伝わるか?
斬新なタイトル誕生の裏側
続編にも引き継がれる「どちらが儲かるか?」という問いかけスタイルのタイトルは、非常に目を引きますが、決定するまでには紆余曲折があったようです。担当編集者によると、企画当初のタイトルはシンプルに「会計の秘密」だったとのこと。原稿が仕上がってくる中で、ストーリー仕立ての面白さ、わかりやすさがより伝わる書名にしたいと考え、タイトル案を10個ほど用意して社内の編集部員、営業部員で人気投票を実施し、『餃子屋と〜』が選ばれました。
もともと、「餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?」というのは、本文中の章タイトル(第5章)でした。章のサブタイトルにもあるとおり、第5章では「利益構造と損益分岐点分析」を解説しています。
つまり維持費が多くかかり、限界利益率の高いフランスレストランは、売上高が損益分岐点を超えると利益は大幅に超える。ところがいったん損益分岐点を下回ると、赤字も一気に増えてしまうのだ。
一方、限界利益率が低く固定費の少ない餃子屋はどうか。売上高が少なくては商売にならない。流行らなければ瞬く間に潰れてしまう。しかし、売上が増えれば、維持費が少ない分すぐに利益に結びつく。逆に多少売上が減っても、利益の減少は少ない。
ビジネスの仕方が全く違うのである。(106〜107ページ)
会計の本質を解説した第1章、バランスシートに触れた第2章、PDCAサイクルを説明する第4章など、書籍全体で管理会計のしくみ全般がわかる構成になっていて、第5章のタイトルはその中の一部を表したものにすぎません。タイトル決定の際には著者の林總さんも担当編集者もその点が一時気になったということですが、相談に相談を重ねた上でゴーサイン。
本書は内容の面白さ、わかりやすさは当然のことながら、タイトルの後押しもあってベストセラーになった作品と言えるのかもしれません。
次回は7月25日更新予定です。
◇今回の書籍 23/100冊目
『餃子屋と高級フレンチではどちらが儲かるか?』
中堅服飾メーカー「ハンナ」のデザイナー由紀は、父の遺言により倒産寸前の会社社長に就任。ところが銀行は一切の資金協力を拒否。1年経っても経営が改善しなければ融資を引き上げるという。由紀は、会計のプロ安曇の指南を受けながら、次々と襲いかかる困難に立ち向かう。そして、ついに運命の日がやってくる…。
林 總 著
定価(税込)1,575円
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