なるか造船復活 嵐の出航#6Photo by Shintaro Iguchi

造船業がかつてないほどに注目される中、監督官庁である国土交通省はいかにして再生をリードするのか。特集『なるか造船復活 嵐の出航』の#6では、30年以上にわたって行政サイドから海事産業に関わってきた同省海事局次長の河野順氏を直撃した。造船のキーパーソンは、日本の造船業の軸となる今治造船とジャパン マリンユナイテッドの統合を巡る“大胆な未来予想図”を明かした。政府会合では結論が出なかったLNG(液化天然ガス)運搬船の再建造計画についても語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)

再編迫るメッセージに込めた真意とは?
LNG運搬船の国内建造を「諦めた」と言えない理由

――造船業再生に向けた投資を議論する政府会合が終わり、LNG(液化天然ガス)運搬船の国内再建造の議論は持ち越しとなりました。今後、再建造に動く可能性はあるのでしょうか。

 LNG運搬船に関し、私から造船会社には、「造船業界として、課題が多々あるからといって、最初から『できません』とは言えない」「建造に向けて、各社前向きに検討するように」と伝えています。言うまでもなく、LNGは、日本にとってなくてはならないエネルギー源で、島国だから船でしか輸入できない。将来的に、特定国でのみLNG運搬船が建造される事態となる場合を想定すると、国内造船所でLNG運搬船を建造できる体制を構築しておく必要性は論を待ちません。政府会合での議論が持ち越しとなった今も、経済安全保障、エネルギー安全保障の観点から、政府の危機感は非常に強いです。

 ブランクがあるので造れるようになるまで時間はかかるでしょうし、船価も非常に高くなるでしょう。最重要技術である防熱タンクの加工は国内にノウハウがないし、設備もない。設計や技術者を含め、同志国の協力なしでは建造は不可能です。

 現在LNG運搬船で最多のシェアを誇る韓国勢も、後発のメンブレン型(船体内部に断熱材を敷き詰める方式)で市場を席巻するまでに大変な苦労をしてきました。先行してモス型(球形のタンクを搭載する方式)を建造していた日本も、本来は、苦労してでもメンブレン型を建造し、踏ん張らなければならなかった。厳しい言い方にはなってしまいますが、経済安全保障上、欠かせない産業というからには、造りたい船だけを造ればいいわけではない。日本にとって必要な船を造れなければならないのです。

――政府が示した投資計画では、「官民1兆円基金」の支援対象が国内建造に限るのか、海外建造も含めるのかは明記されませんでした。

 まず、根底にある考えは、「日本の船は日本で造る」、すなわち国内建造です。造船は、雇用創出効果や経済波及効果が大きく、地方経済を活性化させる上でも重要な産業です。「現在の国内建造量900万総トンを10年後に2倍の1800万総トンに増やす」という目標には、海外建造分は含まれていません。

 ただ、例えば、建造場所は海外でも、日本で設計し、日本の舶用機器を使い、日本の船主に売っていれば、国内建造を補完する意味で、今後支援を検討すべきではないかという意見はあります。その場合にあっても、例えば、海外で合弁会社を設立している場合は日本企業がメジャー出資であることなど、さまざまな要件が必要になると思います。

――2025年末に公表した造船業の再生の道のりを示した資料では「将来は1~3のグループに集約」と明記しました。どんな意図を込めたのでしょうか。

次ページでは、河野氏が、造船再生に向けた政府文書に盛り込んだ「将来は1~3のグループに集約する」という一文に込めた真意を語る。日本の造船業の中核を担う今治造船とジャパン マリンユナイテッドの統合シナジーを最大化させる案についても語ってもらった。