第8回目は、集客の基本「商圏」の設定についてです。果たして開業当時のディズニーランドはどのように商圏を定め、旅行会社のプランをつくりあげ、遠くのお客様を惹きつけたのか?今回も目からウロコの知られざるマーケティングの極意が明らかに。 

宮城、新潟、岐阜までは「日帰りエリア」

 マーケティング担当としては、集客のための基本的な考え方を整理し、旅行業者にアプローチしていく、という役割がありました。まずは、商圏(お客様がいらっしゃる地理的な範囲)の設定です。
 カウンターパートのノーム・エルダーから言われたのは、

1.プライマリーマーケット(第一次商圏)
2.セカンダリーマーケット(第二次商圏)
3.サードマーケット(第三次商圏)

の3つに分けよ、ということでした。プライマリーマーケットは、日帰り圏。東京ディズニーランドの日帰り圏というと、首都圏近郊を思い浮かべてしまうのではないかと思います。しかし、ノーム・エルダーは違いました。

「宮城、新潟、岐阜までをプライマリーマーケットとして考えよう」
と言うのです。
「東北・北陸・東海地方から日帰りでやってくる人は少ないと思う、ここは宿泊客がメインとなるのではないか?」
 私は伝えましたが、彼は、
「バスツアーが使える東海地方はプライマリーマーケットで間違いない」と言うのです。そして、

「この商圏はリピート率が60%以上になる、だから特に大事にしなければいけないのだ」

と教えてくれました。
 そしてそれは、後々数字でも明らかになったのですが、その通りだったのです。

 また、セカンダリーマーケットは、宿泊を必要とする商圏。
 そしてサードマーケットには、驚くべきことに東南アジアの国々が入っていました。アジアの国々の富裕な人たちを、東京のディズニーランドに呼び込む。それを開業の1983年時点ですでに考えていたのです。まさにグローバル規模で発想する、アメリカ人のビジネススケールの大きさを感じました。