Photo by Yoshihisa Wada
2026年3月期の通期決算で過去最高益となる連結純利益9003億円をたたき出し、5年ぶりに総合商社業界で首位に立った伊藤忠商事。27年3月期も純利益9500億円とさらなる増益を見込むが、三菱商事が1兆1000億円で首位に返り咲く見通しだ。巨大な資源権益を有する財閥系商社に対し、非資源ビジネスを強みとしてきた伊藤忠はどう優位性を発揮していくのか。長期連載『経営の中枢 CFOに聞く!』の本稿では、今年4月にCFO(最高財務責任者)に就任した中宏之氏に、全分野を底上げする「平均点経営」の戦略や「ROE(自己資本利益率)15%」の水準を維持する成長シナリオを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 大川哲拓)
2年連続の過去最高益で総合商社トップに
「株価の伸び悩み」と「中計廃止」の真意を激白
――2026年3月期の通期決算では、過去最高益となる連結純利益9003億円で総合商社トップとなりました。一方、年度末にかけて株価は軟調に推移しましたが、この結果をどう見ていますか。
昨年度は2年連続で最高益という形で着地しましたが、株価はいまいちさえませんでした。株価は当然、長期で見るべきですが、昨年度1年間の株価のパフォーマンスは総合商社では下位の方でした。
特に年度後半は中東危機の影響で、資源権益を多く持つ商社が選好され、相対的に当社の株価が弱い形で着地しました。
それを外部要因のせいにするのではなく、株価が振るわなかった理由を考えました。株価は「EPS(1株当たり当期純利益)×PER(株価収益率)」で表されますが、EPSの成長が足りなかったという部分があります。もう一つのPERは「市場の期待値」を示しますが、成長性をしっかりと伝えられていなかったのが反省点です。
つまり、われわれの利益成長がマーケットの期待に届いておらず、成長戦略もマーケットにきちんと伝えられていなかったということです。今後、どのように利益成長させていくかを示す1年にしたいという気持ちで取り組んでいます。
――成長ストーリーを示すという点では、中長期的な経営戦略を求める市場の声もあります。中期経営計画を24年4月に廃止していますが、なぜなのでしょう。
コロナ禍やウクライナ紛争、トランプ関税や中東危機など、不透明・不確実な経営環境が続いており、商社はそういった影響をかなり受けます。世界情勢が見通せない中、3年後の数字を示したところで、達成できなかったり大きく超過したりする可能性があります。そうなったときに、原因探しをしてもあまり意味がありません。不透明な中で数字だけ出すのは無責任だと思っています。
従って、一年一年しっかりと計画を立て、毎年達成していくことに重きを置くべきだと判断しました。その意味でも、どう成長していくかをマーケットに示す必要があるので、大型投資の適時開示時に記者会見やアナリスト向けの説明会を開き、投資の意図や意義をしっかりとお伝えすることに腐心しています。
――とはいえ、中期的にどれくらいの利益水準になるのかを知りたい投資家も多いはずです。三井物産は5月に発表した新中計で30年度に「純利益1.4兆円超」、三菱商事も同年度に「1.5兆円超を視野」としていますが。
聞こえがいいですよね。私も言いたいです(笑)。ステージは変わっていますね。
総合商社のトップ争いが「純利益1兆円」のステージに突入する中、伊藤忠商事は一体どのような勝ち筋を描いているのか。次ページでは、全事業を底上げする「平均点経営」の戦略や、財閥系商社が強みとする資源事業へのスタンスを詳報。さらに、筆頭株主である米投資会社バークシャー・ハサウェイのグレッグ・アベルCEO(最高経営責任者)来日時のやりとりや、今春からCFOを務める心境についても詳しく聞いた。







