パソコンが発想の自由を
妨げている

本田 こちらも、ミーティングではパソコンを閉じろ、という考えを持っているそうですね。

椎木 パソコンが発想の自由を妨げていると思います。今は自分の知らない情報があると、パパッとパソコンで調べてしまうんですね。これは間違いなく便利なことなんですが、こうやって調べること自体が問題だと思っているんです。

本田 それは、なぜですか?

椎木 例えば、アイディア出しをしているときに、池袋に面白い喫茶店があると聞いた、と誰かが言うと、その喫茶店を調べたがります。調べた瞬間に、「ああ、こういう感じなのか、わかった、わかった」と、わかったような気になってしまうのです。調べて答えがわかると、それで終わってしまう。

本田 いまは、スマホも流通しましたし、よくある傾向ですね。

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椎木 そうではなくて、頭で妄想してほしいんです。どんな素敵な喫茶店なのか、どんなファンタジーなのか、どんな人が働いていて、どんな内装なのか。ところが、それをやらない。パソコンがあることで、イマジネーションがすごく小さくなってしまっていて、自由な発想を阻害されてしまう。だから、パソコンを離れたミーティングも大事にしています。

本田 こちらの社員の方のデスクは、すべてとても小さなサイズですね。横幅が普通のデスクよりも40cmほど狭い。

椎木 香港の市場みたいに、隣との距離がめちゃくちゃ近いんです(笑)。こんなところにこんなに人数がいるのか、というくらい、オフィスはぐしゃっとしています。でも、そのぐしゃっと感を大事にしているんです。すごく狭くて、隣の声はダダ漏れで、超うるさい環境ですが、だからこそ、できる発想を大事にしています。一人では絶対にできない発想。一人では絶対にできない広がり感。そういうところから、面白いアイディアは出てくるんです。

本田 なんだか家のリビングにいるみたいですね(笑)

DLEの打ち合わせスペース

椎木 実際、ちょっとした誰かの一言や馬鹿話のような話から、アイディアが始まることもあるんです。そういうものをいろんな人間でわいわいやりながら、気がつくとビジネスになっていた、ということが少なくない。パーテーションの環境や、一人になれる環境、セクショナリズムは、それを阻害してしまうと思うんです。

本田 すべての会話が、仕事に繋がると。

椎木 狭い中で、ごちゃごちゃやって、みんなうるさいと、ヘッドフォンをしたがったりするんですけど、それもやめてほしいと伝えています。例えば僕が何かを褒めていたり、怒っていたり、隣の人が何か電話していたり、隣同士で会話していたり、そういうものも全部、聞いておいてほしい、と。余分な情報が大事なんです。余分な情報があるから、ここにいる意味がある。僕は、東京は余分な情報の宝庫だと思っています。そして世界で戦うには、その余分な情報だらけの東京の強みを武器にするべきなんです。

 東京のごった煮感、とんがっている感、ファッションや食、溢れる情報…。世界に出て行くときには、そういうものこそが差別化を生む。だから、情報を浴びるように受けたり、外を見たり、音を聞かなかったりすれば、ものすごくもったいない、というわけです。


「あたらしい働き方」バックナンバー

第1回 あたらしい働き方がどんどん出てくる今、
なぜまだ昔の基準のまま会社を選ぶのか 

第2回 あたらしい企業選びの基準
6つのクライテリアと17の必要なスキル

第3回 セルフマネジメントができる人には、こんなラッキーな会社はない
【企業インタビュー:パタゴニア編】

第4回 働きやすさとは、カルチャーが合うか、合わないか
【企業インタビュー:ザッポス編】

第5回 日数制限のない有給制度をつくってしまった会社があった
【企業インタビュー:エバーノート編】

第6回 イノベーションを生み出す力を身につけるための教室は、
フレキシブルで、空間にもこだわりがあった。
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第7回 なぜあの会社には、働き方のルールがないのか?
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第8回 会社への文句を
社内ツイッターで堂々とつぶやいてOKの会社があった
【企業インタビュー:セールスフォース・ドットコム】

第9回 仕事と趣味の境界線を曖昧にする。
仕事が趣味になれば、いつでも楽しいはず
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第10回 チームの要望通りに
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第11回 自分で仕事の時間を切り分けられるから
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第12回 午後3時には仕事を終えて
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第14回 営業も部長も課長もいない
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第15回 「優秀な人材だけの、とんでもなく成長できる会社」をつくりたかった
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第16回 なぜ、この会社は
若い人に圧倒的な知名度と就職人気があるのか?
【企業インタビュー:Plan・Do・See(プラン・ドゥ・シー)編】

第17回 営業職でも、サテライトオフィス勤務可!
の会社があった
【企業インタビュー:Sansan編】


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本田直之(ほんだ・なおゆき)
レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役社長兼CEO
シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役としてJASDAQへの上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資事業を行うと同時に、少ない労力で多くの成果をあげるためのレバレッジマネジメントのアドバイスを行う。東京、ハワイに拠点を構え、年の半分をハワイで生活するデュアルライフを送っている。

幸福度ランキングトップの北欧(デンマーク、スウェーデン、フィンランド)の人たちと幸福について語り合って著した近著『LESS IS MORE 自由に生きるために、幸せについて考えてみた。』(ダイヤモンド社)が話題になっている。
このほかの著書に、ベストセラーになったレバレッジシリーズをはじめ、『ノマドライフ』(朝日新聞出版)、25万部を越えるベストセラーとなった『面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則』『ゆるい生き方』『7つの制約にしばられない生き方』(以上、大和書房)『ハワイが教えてくれたこと。』(イースト・プレス)などがある。
著書は累計200万部を突破し、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。