問われる「ファンドである意味」
「場」をしつらえて、人をつなぐ
――事業者向けのファンドは、どのような経緯で生まれるのでしょうか。
小松 当社のファンドの多くは、お付き合い先からの「紹介」で生まれました。ただし、もちろん信頼できる方からのご紹介であっても、ファンドにならないものもあります。
――選定のポイントは。
小松 実はあまり「選んでいる」という感覚はないんです。その事業者と組むことで「ファンドである意味」が生まれ、それを事業者と出資者にご理解いただけるかどうかがポイントです。
――意味、ですか。
小松 極端な表現かもしれませんが、寄付は「お金を渡して終わり」になってしまうこともありますが、投資は「事業者を応援するためにお金を託す」ものです。ですから、「みんなで一緒に力を合わせる」ことが効果を発揮するプロジェクトでないと、ファンドである意味がありません。
――でも事業者にとっては、正直、面倒な仕事も増えそうです。たとえば、500人の方から出資をいただいたら、彼らとずっと向き合わねばならないですよね。
小松 はい、結構面倒ですよ(笑)。ファンドを組むときも、組んだあとの出資者への情報発信も、とにかく手間がかかります。だから「ファンドである意味」がなおさら重要です。でも経営者にとっては、健全な経営をしなきゃ、というプレッシャーになるらしいです。
――音楽ファンドでは「ミュージシャンと一緒に戦う」「ミュージシャンとファンがつながる場をつくる」ことが自社の役割だとおっしゃいました。事業者向けのファンドでも同じですか。
小松 基本的には同じですが……あえていうなら、事業者・出資者・当社の3者をつなぐプラットフォームを作る、ですかね。でも、もっとうまく伝えられる言葉があると思うんですが……他にどんな表現がありますかね?
――え?「場をつくる」とか「整える」とか?
小松 違うなあ……日本語ひと言で……。
――……しつらえる?
小松 ああ、それ!それです。「しつらえる」が適切かもしれない。
当社がいまお付き合いしている事業者は、ものづくりを「生活のため」にしていないんです。つくりたいものが明確にあって、そのために足りないのがファイナンスなのです。ですから私たちは、ファイナンスを生み、ものづくりを実現させる場を「しつらえている」感覚です。
次回は、「セキュリテ」という事業者を応援する「場」が育んだ事業者と出資者(ファン)のつながり、そしてファン同士のつながりについてお聞きします。ミュージックセキュリティーズが見つけた、金銭以外の「リターン」とは?(9月13日更新予定)