ライバルの登場

 1960年代も終わりに近づくころには、マッキンゼーは他のコンサルティング企業のあいだで羨望の的になっていた。いまや、マッキンゼーを雇うのは「問題のある企業」ではなく成功した「優良企業」だけというイメージを確立していたわけだが、やがてライバルも存在感を見せつけるようになる。

 1963年、コンサルティング・ファーム、アーサー・D・リトルのベテランコンサルタントだったブルース・ヘンダーソンがBCG(ボストンコンサルティンググループ)を創立した。BCGの誕生は「戦略的コンサルティング」の時代の始まりを意味していた。

 ヘンダーソンは、いまでは「PPMマトリックス」として知られている4象限マトリックスで企業がとるべき経営戦略を驚くほど単純に説明した。現在、企業が提供している製品が、「金のなる木」「花形」「負け犬」「問題児」のどれに当たるかを分類させ、企業の複雑な問題をたった1ページのシートにまとめるというBCGの手法は、当時の経営者から歓迎された。

 また1973年にBCG出身のビル・ベインにより設立されたベイン&カンパニーは、「1つの産業につき1つの企業をクライアントに持つ」「コンサルティングの質は株価の上昇ではかられる」という2つの基本方針を打ち出した。これは、1つの産業にたずさわる複数の企業をクライアントに持つマッキンゼーに対する明らかな挑戦だった。ベインの登場は、利益相反を心配する一部の企業にとって朗報として受け入れられた。

 ベトナム戦争、石油禁輸、インフレ、不況、金本位制の廃止とドルの切り下げ、ヨーロッパとアジアの台頭により、アメリカ全体が自信を失いつつあった1970年代初頭。20年連続で成長を続けていたコンサルティング業界の収入も頭打ちの状態に陥った。マッキンゼーはクライアントの需要がへり、相次ぐ海外オフィスの開設から資金繰りが厳しくなっていた。

 新手法を打ち出してくる強力なライバルの登場と、1970年代の不況。マッキンゼーはかつて経験したことのない難題に直面することになった。

次回の掲載は9月24日です。引き続き、9月20日刊行予定のダフ・マクドナルド著『マッキンゼー――世界の経済・政治・軍事を動かす巨大コンサルティング・ファームの秘密』から要約(マッキンゼー的人材とは何か)をお届けします。


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