日本における女性労働の比率は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、カナダ、スウェーデンに比べてはっきりと低く、日本はまだまだ女性が職を得にくい(女性労働の活用が遅れている)国だといえます。しかも、いまの日本では、女性労働者の過半数は非正規雇用で働いています。図表2にそのデータを示しました。

 2013年1〜3月の非正規雇用比率を男女別でみると、男性では21.0%なのに、女性では55.5%になっています。全体的に非正規雇用比率の上昇が進んでいて、20年前の1993年2月と比べると、男性で11.6ポイント、女性で17.0ポイント高くなりました。

 前編でみたように、運転免許取得のために通う教習所の自動車教習料は、デフレ下でもさほど安くなっていません。教習を受けるには、時間も労力もかかります。免許取得にかかるコスト負担(おカネと時間と労力)が、免許取得によるメリットより大きいと感じる人は、免許を取得しないほうが合理的です。そして、20歳代の免許保有者の女性比率が人口の女性比率に近づけずに伸び悩んでいる現象は、まさに経済合理性で説明できそうです。

 国際的にみて、日本は男女間の賃金格差が大きい国です。図表3の上側グラフで確認しましょう。日本の女性の賃金は、平均で男性の約7割しかありません。2011年(フランスだけ2010年)の統計で比べると、欧米諸国より10〜20ポイント低い数字です。アメリカ、イギリス、ドイツ、スウェーデンでは、女性の賃金は平均で男性の8割ちょっと、フランスでは9割となっています。

 おまけに、日本では、勤続年数も女性のほうが短くなりやすいことが、図表3の下側グラフからわかります。日本の女性の勤続年数は、男性の7割弱でしかありません。欧米諸国をみると、ドイツ、イギリスなら約9割で、アメリカ、フランスなら男性とほぼ同じ、スウェーデンでは男性より長くなっています。

 就職して働くときのために学生のうちに運転免許を取り、就活の際の履歴書に書こうとする若者にとって、自動車教習料などのコスト負担は決して軽いものではありません。日本の女子学生は、働いたときに得られる賃金が男性より約3割安く、内定をもらった会社での勤続年数が男性より約3割短い―――平均的には、そう予想されます。この男女格差があるため、運転免許取得のためのコスト負担が割に合わないと感じて、運転免許を取らない若者の比率は、女性のほうが高くなるでしょう。

 ここまでで、伸ばせる余地があるはずの、若い女性の免許取得率が伸び悩んでいる裏側には、俗にいう“おカネの問題”があることがわかりました。そこで、せっかく調べたデータですから、なにかの提案に結びつけてみましょう。