前回述べた財務省のみならず、日本の官庁のウェブサイトは、かなり使いにくい構造になっている。しかし、総務省統計局のサイトが充実しており、そこから有用な統計データを多数得られるために、われわれはだいぶ救われている。
統計局は、国勢調査のほか、労働力調査、事業所・企業統計調査、小売物価統計調査、家計調査、全国消費実態調査などを実施している。統計局のサイトでは、これら以外に、他省庁などが作成したデータが使いやすい形で整理されている。普通の利用者にとって便利なのは、後者のデータだ。
これらは、「日本統計年鑑」「日本の統計」「世界の統計」「総合月次統計データベース」「ポケット統計情報」「日本の長期統計系列」に納められている。これらはほぼ同じような内容のものであるが、日本のデータを利用するのであれば、「日本統計年鑑」を見るのがよいだろう。
なお、統計局のサイトには、「統計データ・ポータルサイト」というものが設けられている。これは、一見したところ便利なサービスのように思えるのだが、残念なことに、この中の「分野別統計データ」は、ほとんど使い物にならない。
たとえば、「金融・保険」の中の「金融」という項目を開くと、出てくるのは、「政府金融機関に関するアンケート調査」「中小企業連携活動実態調査」「金融環境実態調査」だけだ。これらは、普通の人が求める金融データとはおよそ関係がないものである。日本の場合、金融関係のデータは日本銀行で作成されているものが多いのだが、「分野別統計データ」が対象とするのは中央官庁だけで日本銀行が除外されているため、こうなってしまう。
「統計データ・ポータルサイト」からは、むしろ「府省等統計サイト」」を経由して、各省庁に行くのがよい(このルートだと、日本銀行にもたどり着ける)。前回述べたように、日本の官庁では、内容を手がかりにして探しても、目的にはたどり着けない場合が多いのだ。官庁のデータを調べるには、組織別、機構別に調べなければならないと述べたが、それはこの場合にも正しい(なお、このルートによっても、たとえば、金融庁関係のデータにたどり着くことはできない)。
日本の官庁による情報提供は、利用者の便宜を考えて行なわれているのではなく、提供者の都合によって行なわれているのである。これは、統計データにかぎらず、あらゆる情報提供について言えることだ。これを知っているか否かで、官庁からの情報入手の効率性は大きく異なるものとなる。