注目の特定秘密保護法案が10月25日に閣議決定されて国会に提出された。

 安倍晋三政権は、この法案と一体視されるNSC(国家安全保障会議)設置法案と合わせて、今国会中の成立を目指している。

 まず、このような重要法案、しかも異議の多い法案をわずか1ヵ月で成立させようとするのは間違っている。徹底した審議を重ね、必要な大幅修正をして国民的理解を得なければ、政権の求心力が失われるかもしれない。

「行政機関の長」が特定秘密を指定

 法案を読んで、さまざまな疑念を抱いたが、特に気になったのは、「特定秘密」が閣僚など「行政機関の長」によって指定されること。

 そして、その指定内容をチェックする制度的保障がないことだ。

 これに違反した場合の最高刑は10年以下の懲役とされているから特定秘密の漏えいはかなりの重罪だ。

 ここで大きな疑念が湧いてくる。

 そもそも、1人の行政機関の長の意向によって指定した秘密を漏えいした者が、10年の懲役に処せられるなんて、法理論的に許されるのか。

 この点に関して安倍首相は国会でこう述べているが、これを聞いて、さらに不安が高まった。

「閣僚は(秘匿の必要があると判断された)特定秘密の指定と解除の権限がある。政権交代で新閣僚が誕生すれば、改めてその適否を判断することもありうる」

 これでは、同じ特定秘密を漏えいしても、10年の懲役を科せられる人と罪を問われない人が出る可能性がある。