世界経済は土俵際にいる。満身創痍でも踏みとどまるか、転がり落ちて当面立ち直れない重症か。

 1930年代の世界恐慌時と異なるのは、歴史的教訓を踏まえて、なすべき政策対応が理解されていることだ。迅速かつ大幅な利下げ、流動性供給、不良債権買い入れ、公的資金注入、さらに財政出動と、段取りを踏んでいる。

 経済は今も下振れリスクが優勢ながら、30年代の轍は踏まないとのシナリオを期待するゆえんである。

 さて、内外景況・市況が悪化するほど債権国通貨の円は否応なく上昇する。このことはいまや誰も疑いようがない。

 ユーロが基軸通貨になる、資源価格は構造的に下がらず豪ドルは安泰、新興国通貨は堅調などという、数ヵ月前まで喧伝された論陣は見る影もない。かえってこれら通貨への極端な悲観論が横行する始末だ。

危機第1波、第2派と通貨の動き

 ここでは少し冷静に全体を俯瞰し、土俵にとどまるケースを展望しよう。上の図は、今年1~3月と8~10月の危機第一波、第二波における主要通貨の対ドル相場を、各国経常収支(対外債権・債務ポジションの目安)と並べている。